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【27】-3

 記者の質問に、拓馬はにこりと微笑んだ。 「まず、当社の『サンドリヨンの微笑』がもたらしたドラマチックな騒動に関しまして、一連の出来事のあらましをお話させていただきます。消えたシンデレラに関しては……」  玲は固唾をのんだ。 「プロモーション・イベントの一つとして周防氏の協力のもとに当社が仕掛けたものです」  ザワッと会場の空気が揺れる。 「宣伝の一環だったということですか」 「私たちは騙されて……」 「返却日は、新商品発表のタイミングに合わせ、十月頭を予定していました。同時に真相を公開する予定でしたが、予想外に反響が大きく、これ以上長引かせることで各方面に多大なご迷惑をおかけしてしまう可能性も出てまいりました。そうした状況を鑑みて、予定より一週間ほど時期を早めることになりました。本日、このような席をもうけさせていただいたのは、そうのような次第です」  今日まで日数を要したのは、急な予定変更に伴い双方の調整が必要だったためだと付け加えた。狸だ。 「と、いうことは、今日、ここで周防氏からネックレスの返還があるということですか」 「そうです」  ザワザワと会場が揺れる。 「それは、今日ここに、プロモーション・ビデオの金髪のモデルとは別の、パーティーで消えたシンデレラが現れるということで間違いないですか」  玲は伊藤の顔を見た。余裕の視線が返される。  効果的な間をおいて、拓馬が「そうです」と答えた。  周防が立ち上がり、アイスブルーのエナメルケースを右手で持ち、胸の前に掲げる。プロポーズを決意した王子そのものの姿に、フラッシュの音がバチバチと降り注いだ。  会場の扉が開いた。  ふわりと裾の広がったアイスブルーのシフォンドレスが最初に覗く。続いて、ゆっくりとシンデレラが姿を現した。  光の洪水。一斉に焚かれるフラッシュ。

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