153 / 191

【27】-4

 その中に立っているのは黒髪の東洋人モデル、「レイ」だ。  絶え間なく瞬く白い光の中、「レイ」が周防の前に進んだ。エナメルケースの蓋を周防が開く。  無数の光を浴びて『サンドリヨンの微笑』がさらに強い光を放つ。  光の塊を周防が手に取ると、「レイ」が身をかがめた。周防が背中に回り、白い首筋にきらきら輝くネックレスを巻き付ける。 画面を凝視していた玲は、あんぐりと口を開けた。 「綺麗よね」  伊藤がほうっとため息を吐く。 「とても四十五歳には見えないわ。玲ちゃんのお母さん」  モデルに関するいくつかの質問と、周防の個人的な近況に関する質問に最大限のサービス精神をもって拓馬と周防が答え、短い会見は終わった。 「この後、新商品のプロモーション・ビデオを……」  本来の目的であるはずの商品説明は熱のない空気の中で行われた。心優しい記者数名を除いて、会場はガランとしている。 「これでいいんだよ」  拓馬は笑った。 「宣伝なら、十分にしてもらったからな」 「お母さん……」  控室に入ってきた母に、玲はただ「何やってるの」としか言えなかった。  年齢不詳のシンデレラは肩をすくめた。 「何って、お仕事よ。拓馬くんに頼まれたの。ちょっと痛い役回りだなぁと思ったけど、あなたのために引き受けたんじゃないの」  記者たちの質問に拓馬が答える形でプロフィールの詳細を明かすことになった母は、会場中が落胆する空気をまざまざと感じて切なくなったと泣きまねをしてみせる。 「年齢で人を判断するの、いい加減にやめてほしいわ」

ともだちにシェアしよう!