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【28】-1

「玲は、面白い子で……」  私服に着替えた母と、ラウンジで軽い食事を取った。  母にとって、周防は財閥の御曹司やホテルの役員ではなく、十二年ぶりに会った懐かしい青年なのだろう。何も気負うことなく、楽しそうに話している。 「小さい時から、女の子みたいって揶揄からかわれては、よくケンカをしてたの。ある時、私は玲に、やっぱり男の子のほうがいいの? 女の子は嫌? って聞いたんです。そしたら、別に嫌なわけではないって言うんです。じゃあ、いっそ女の子に生まれたほうがよかった? って聞いても、それも違うって言うの。玲は、自分が男の子でも女の子でも、そこはどうでもいいって言ったんです」 「どうでもいい……」  周防が隣に座った玲を見る。 「変わったことを言う子だなと思うでしょ? でも、少し大きくなって、自分の考えを多少はうまく言えるようになると、『嫌なのは、揶揄からかわれること』なんだって言ったんです。外見を揶揄からかわれるっていう行為そのものが嫌だって。それは確かにそうでしょうと、私も思いました。でも、それとは別に、やっぱり、自分が男の子でも女の子でも、それはどっちでもいいって言うんですよ」  どういうことなのかと、親としてはいろいろ考えたと母は言った。  おかしな男に狙われることが多かったので、母自身がそれに影響されて、玲にはマイノリティな性指向があるのだろうかと考えもした。  その可能性もあることを心に留めて、いろいろ考慮しながら接していたのだと打ちあけた。  全然、知らなかった。 「でも、しばらくして、そういうことじゃないんだなって、私もわかってきたんです」  外側にある属性ではなくて、その人自身の能力やどうありたいかという希望を評価したり大事にしたりする考え方が、最近はよく見られるようになってきたと、母はそんな話をした。 「年齢や性別や生まれた地域や、そのほかいろいろな、その人の背景にあるものとその人個人を切り離してものごとを判断しようっていう考え方……。玲は、すごく小さい時から、そういう考え方をしていたように思うんです」 「そんなすごいこと、考えてないよ」

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