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【28】-4
もともと周防の花嫁探しの噂も、周防の母親である瑤子が周防に言った『いい人がいるなら紹介してほしい』という言葉が発端で、それを広めたのが家に出入りする瑤子の親戚たちだったのだ。
おしゃべりな親戚は一人や二人ではないらしく、どんなに隠してもプライベートの一部がどこかから漏れる。世間の興味を引くものは噂になって広まり、今回のようにマスコミにまで取り上げられ、『麗しの王子』などと騒がれたりする。
「なんか、大変そうだよな。でも、周防はそれを逆手にとったんだってさ」
ダミーの候補者で撹乱し、そのまま誤魔化して逃げ切るつもりでいたらしい。
「ところが、玲と食事をしたりして浮かれていたら、周防瑤子さんに嗅ぎつけられたらしくて、是非、会いたいって迫られたらしい。で、そのこともどこからか漏れて、あの日……」
周防武夫を更迭するために『ホテル周防インターナショナル』に現れた周防と瑤子は取材陣に囲まれた。
「それが、周防側のシンデレラ騒動の顛末だってさ」
「そんなこと、誰に聞いたの?」
「周防氏本人だよ」
いつからそんな仲よしさんになったのだ。
「俺、あの人けっこう好きなんだよな」
「そうなんだ」
「濡れた靴とスーツをさ、弁償するって言わなかっただろ。腕のいいクリーニング店を紹介して、しっかりメンテナンスしてくれて、また使えるようにしてくれた」
「うん」
ケチでそうしたのではなく、拓馬のスーツと靴のよさを認めて、拓馬がそれを気に入っていることもわかっていてそうしたのだと言う。
そのへんが好きだと言う。
「ただの大金持ちじゃないんだよ。すごく普通の感覚を持ってる。だから、まあ、あの人になら、玲をあげてもいいかなと思ってる」
どこの立ち位置からの「あげてもいいかな」だよと思うが、拓馬の気持ちはやはりありがたい。
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