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【28】-5

 ずっと拓馬に助けられてきた。本当の兄弟のように一緒に生きてきたのだ。 「あの人、玲が俺の家にいるの嫌みたいだけど、何か言ってた?」 「……上に、引っ越してきてほしいとは言われた」 「仕事のことは?」  拓馬にも話しているのだとわかった。  玲が望むなら、もう一度『周防インターナショナルホテルズ&レジデンシャル・ホールディングス』に戻るかと周防は聞いた。玲だけではなく、セクハラやパワハラの被害が明らかな者には同等の措置を取るという。 「拓馬がいいって言えばなんだけど……」 「いいよ」  まだ、何も言ってない。けれど、拓馬は玲の好きなようにすればいいと言ってくれた。 「正直、うちの仕事は続けてほしいけどな」 「だったら、よかった」  拓馬が振り向く。 「俺、これからも『SHINODA』で働きたい。ずっと、ホテルの仕事に憧れてたけど、今の仕事も好きだ。やっと少しは役に立てるようになってきたと思うし、続けてもいい?」 「もちろんだよ。助かるよ」  本当にいいのかと聞かれ、自分の心をゆっくりと確認した。  ホテルの仕事も、宝石を売る仕事も、大事なことは同じかもしれないと思うようになった。相手のために自分ができることは何かを考えて、そのために必要な知識を増やして、技術を磨いて、一人前になってゆくのだ。  誰かを幸せにする魔法使いはいろんなところにいる。  玲が頷くのを見て、拓馬はふっと息を吐いた。そして、「で?」と聞く。 「部屋は?」 「部屋は……」 「さすがに、引っ越すよな? もちろん、俺のほうは、ずっといてくれて構わないんだけど……」

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