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王子様も眠れない(7)

 そう長くなる話ではない。ただ、周防の胸のうちを誰かに吐露したいのだ。そうしなければどうにも胸が苦しくて仕方ない。  早番の玲は八時前には帰宅するはずだ。周防の部屋に移って半月あまり、玲も篠田に会いたいだろう。  もう自分は篠田に嫉妬していない。己の心の広さに満足しつつ、もしよければ夕飯を一緒にどうかと添える。  まもなく篠田から了承を伝える返事があった。 「なんだ、この広さは」  二十四階の周防の部屋に足を踏み入れるなり、篠田が言った。一般的な生活空間がどの程度の広さなのか周防も知っているつもりだが、『SHINODA』の代表取締役にとってもこの部屋は広いらしい。 「玲はもう慣れたようだ」 「みたいだな。玄関で忘れものに気づくと取りに行くのが遠いとかぼやいてたけど」 「言ってくれれば、僕が取りに行くのに……」  ぼそりと呟くと、篠田が胡乱な目を向けてきた。何かおかしなことを言っただろうか。 「食事の下ごしらえがあるので、キッチンで話しても構わないだろうか」 「あんたが作るのか?」  すっかり敬語の取れた篠田が目を丸くする。 「玲が、僕の料理を気に入っている。玲はハンバーグが好きだと言うので、今日はハンバーグを作ろうと思う」  ぽかんと口を開け、いつも周防が作るのかと聞くので、土日だけだと答える。平日は仕事で遅くなるので通いの家政婦に任せていると続けた。 「玲を待たせては可哀そうだからね。玲は、お腹がすくと元気がなくなる」

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