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王子様も眠れない(10)

「考えてみてくれ」  周防はありのままの状況を話すことにした。 「玲は、十歳のままなんだ」 「十歳? どういうことだ?」 「僕に向ける感情が、十歳の時のままなんだよ」  ただ純粋に好きだと訴えてくる。好きで、好きで仕方ないという感情が、ストレートに向けられる。 「無防備で貪欲で奔放な、子どものままの感情が……。しかも、身体は大人なんだ」  子どもだと思えば自然にかかるブレーキが、全く作動しない。 「毎晩、心臓を射抜かれて、葛藤している。非常に、苦しい」 「あのな……」  一応、最後まで話を聞いていた篠田が、ぼそぼそと「気持ちはわかるけどさ」と呟いて頭を掻く。 「前にも言ったけど、身内のそういう話を聞くの、ビミョーに気まずいんだよな」 「そ、そうか……。すまない」 「悪いな」  話はそれだけだと言うと、だったらリビングで待つと言ってキッチンを出ていった。  しばらくして玲が返ってきた。 「ただいまー」 「お帰り、玲」  キッチンを出て、いそいそと出迎えに行く周防の後ろを、篠田がついてくる。 「トモー、ただいまー」  広げた腕の中に仔犬のように玲が飛び込んでくる。 「トモ、今日はね、お店にね……」  いつものように話し始めてから、篠田の存在に気づいて「あれ、拓馬? どうしたの?」と首を傾げた。 「食事に招待された」

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