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王子様も眠れない(11)
「トモが作るの? 何? ハンバーグ?」
周防に抱きつたまま「トモのお料理美味しいよ」と篠田に笑いかける。そのまま、キッチンまでついてくるので、スーツを着替えてくるように促した。「はーい」と素直に返事をして玲が寝室に消えてゆく。
篠田と目が合った。
無言で頷く周防に、篠田が「なるほど……」と呻いた。
食事の支度をする間も周防にまとわりつく玲を眺め、好物のハンバーグをにこにこしながら食べる玲を眺めて、篠田は「確かに、なんだか懐かしい」と言って神妙な顔をした。
食事を終えると、早々に席を立つ。
「ご馳走様でした。めちゃくちゃうまかったです」
お店が出せるよね、という玲に、周防の身体が一ダースくらいあればなと篠田は答え、それから「玲もたまには何か作ってやれよ」などと言った。
いいやつだ。涙が出る。
玲と一緒に玄関まで見送ると、篠田は、ぎゅっと周防の腕にしがみついている玲を眺めて、ぼそりとひと言こう言った。
「同情する」
周防は目を伏せた。
本当に、いいやつだ。
「わかってもらえて、嬉しいよ」
篠田が行ってしまうと、玲は自分が食事の後片付けをすると言った。
ダイニングに戻り、カップにコーヒーの残りを注いでやりながら「僕がやるよ。玲は休んでて」と周防は言った。
玲は口を尖らせる。
「トモ、過保護すぎる。俺のこと、十歳の子どもだと思ってない?」
「それは……」
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