189 / 191

王子様も眠れない(11)

「トモが作るの? 何? ハンバーグ?」  周防に抱きつたまま「トモのお料理美味しいよ」と篠田に笑いかける。そのまま、キッチンまでついてくるので、スーツを着替えてくるように促した。「はーい」と素直に返事をして玲が寝室に消えてゆく。  篠田と目が合った。  無言で頷く周防に、篠田が「なるほど……」と呻いた。  食事の支度をする間も周防にまとわりつく玲を眺め、好物のハンバーグをにこにこしながら食べる玲を眺めて、篠田は「確かに、なんだか懐かしい」と言って神妙な顔をした。  食事を終えると、早々に席を立つ。 「ご馳走様でした。めちゃくちゃうまかったです」  お店が出せるよね、という玲に、周防の身体が一ダースくらいあればなと篠田は答え、それから「玲もたまには何か作ってやれよ」などと言った。  いいやつだ。涙が出る。  玲と一緒に玄関まで見送ると、篠田は、ぎゅっと周防の腕にしがみついている玲を眺めて、ぼそりとひと言こう言った。 「同情する」  周防は目を伏せた。  本当に、いいやつだ。 「わかってもらえて、嬉しいよ」  篠田が行ってしまうと、玲は自分が食事の後片付けをすると言った。  ダイニングに戻り、カップにコーヒーの残りを注いでやりながら「僕がやるよ。玲は休んでて」と周防は言った。  玲は口を尖らせる。 「トモ、過保護すぎる。俺のこと、十歳の子どもだと思ってない?」 「それは……」

ともだちにシェアしよう!