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王子様も眠れない(12)

 周防の目が泳ぐ。玲は、自分はちゃんと大人だし、仕事もしているし、家事もできると言い張った。 「トモみたいに上手じゃないけど、ごはんも作れるよ」 「それは是非味わいたい」  素直に答える。玲は続ける。 「俺だって、トモにしたあげたいこと、いっぱいあるんだからね」 「そうか」  嬉しいよと頷くと、玲が席を立って周防の前に立つ。当たり前のように膝に乗り、肩に腕を回して「トモ、大好き」と抱き付いてくる。 「僕も、玲が大好きだ」  平静を装って答えながらも、心臓はドキドキと騒ぎ出していた。股間もまずい状況だ。 「トモ……、俺、明日お休みだよ?」  周防の耳元で玲が囁く。 「玲……」  くらりと眩暈がした。玲の背中を抱く腕に力がこもる。  誓って言おう。  自分は決して手の早いほうでも、いわゆる「たらし」でもない。むしろ身持ちの堅い男だと言われてきたはずだ。  出会ってすぐにキスをしたり、無茶を言ってベッドに誘ったり、何日もたたないうちに一緒に暮らすことを望み、暮らし始めれば際限なく求め、ただれた夜を重ねているが、それらの原因は、自分だけにあるとは思えない。  絶対、玲にもある。 「トモ、大好き。チューして」  淡い色の大きな目を潤ませて、まっすぐ見つめてくる。この目に逆らえる男がいるなら教えてほしいと、周防は思う。  唇を重ねると、「もっと」と甘い声が囁いた。 「……片付けは、後でいいか?」 「うん」  嬉しそうに頷かれ、周防はあえなく陥落した。

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