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後編

 非常に残念だが、苦しすぎてこれはダメだ。オレはケツ穴から指を出し、そしてベッドから立ち上がった。  キョロキョロと家の中を見渡す。残念ながら二人掛けのソファはあるがクッションは無い。枕も一個しかない。どうする、どうするオレ? この難題をクリアしない限り落ち着いて続きが出来ない。可能ならクッションが三つくらい欲しいが、残念ながら今は無理だ。なら何をもって代替品とするか?  とりあえずタオルケットを丸めてみたが足りない。そこに枕を加えてみたが、まだ少しと言うか微妙に足りない。ならばと言うことで、クローゼットの上段に仕舞っておいた掛け布団を取り出した。もちろんギリギリで気が付いて、指のローションをティッシュで拭き取ってからだ。  布団とタオルケットを使って、何とか具合の良い背もたれが完成した。実はオレ、今までは普通にベッドに横になってやっていたのだ。寝るときと一緒で、頭には枕だ。ディルドを使ってたときはこれで問題なかったのだが、指はダメだった。あの体勢で時間をおくには腹筋が必要になることが分かったのだ。気持ち良くなるための行為で苦行を強いられるのは、やはり何か違うよな。とりあえず今夜はこれで良いとして、明日以降は気持ち良い体勢を模索していく必要がある。うん。やっぱり今日は早く帰って来て正解だったな。  と言うことで、仕切り直しでもう一回。さっきと同じようにローションを付けた指先で穴の回りを軽くマッサージして、それから指を入れた。そのまま暫くその体勢だ……。よし、この体勢は問題無い。  特に痛みも無いから、馴染んだころに指を動かしてみた。うーん、何か不思議なカンジだ。ケツの中ってこんな風になってるんだな。人体の不思議を再発見ってところだろうか。穴を締めてるなんちゃら筋ってのは思ったより力が強いようだ。ちょっとだけ締めたり緩めたりもしてみたが、結構凄いんじゃないか?  最初は薬指だったが、抜き差しも問題無かったので、中指人差し指親指とシフトさせてみた。親指は体勢的にかなり苦しかったがそこは一瞬だけ根性で何とかしてみた。まあとにかく問題無かったら三本目のディルドでも大丈夫だろう。ディルドは指二本の太さよりは細かったから、初めての解し作業はこんなもんだろう。  と言うことで三本目挿入。三本目は薄い水色だ。親指より太いから最初は少しキツかったが、暫くそのままにしたら慣れたと言うか馴染んだ。いったん抜いてローションを追加し再度挿入。ケツ穴を締めてみたらよりディルドを感じることが出来た。 「ん……ん、ん、ん……」  抜き差しすると、今まで以上にゾワゾワ感が強い。感じると言うのとは少し違うのだが。いや、もしかしたらこれを極めたら感じるようになるんだろうか? この先の未知の予感に背筋が震える。うーん、今日が三本目初日だが、これは四本目に手を出しても良いんじゃないか? と言うか、オレの身体がもっと太いディルドを求めてるような気がするんだ。  暫し葛藤した後、ケツ穴にディルドを突っ込んだままの状態で小冊子を手に取った。いや、だって、抜くのが惜しいじゃないか。  三本目の説明の次のページには、以降は自分のペースでやってくれと書いてあった。つまり四本目五本目のディルドを使うタイミングはオレ次第だってことだ。よし、なら行こう。物事には勢いってのが重要だ。そして今のオレは勢いに乗っているってことだ。やはりこのタイミングは逃してはいけないのだ。  ちなみに四本目は三本目の倍近い太さがあったので、これを入れる為には再度指を使っての解し作業が必要になる。さっきは指一本だったが今度は二本だな。 「ん……ぁ、ぁ、ぁぁ……、はっ、ぁん」  四本目のディルドは、はっきり言って凄い。何だこれは。この太さになって初めての感覚だ。気持ちいい。しかも無意識に声が出てしまう。ディルド自体が真っ直ぐな棒ではなく、微妙に波打ってるような形状なのが関係してるのかもしれない。これが穴のふちのところを刺激して、快感を齎してるみたいなんだ。今までは先を予感させるゾワゾワ感だったが、今はそれがはっきりと気持ち良いと感じてる。 「あああっ! な、何? 何これ?」  突然身体中に電流が走ったような感覚がした。一瞬、目と言うか目の前がスパークしたぞ。ハア、ハア、ハアと息をしながら辺りを見回す。一番最初に浮かんだのは落雷だ。でも停電もしてないし外も騒がしくない。と言うことは、今の感覚の原因は外じゃないってことなのか?  未だに収まらない動悸にキョロキョロと目を走らせてたところ、一瞬信じられないものが見えてしまった。見間違えじゃないのか? そう思いつつも現実を直視したくなくて、なかなかそこに目をやることが出来ずにいるオレ……。それは仕方ないと思うんだ。  だって……、オレのムスコが完起ちしてるんだ。何故?って思うのは普通じゃないか。  ところで、こんな状況にも拘らずオレの右手は未だにディルドを掴んでいて、そしてそのディルドはオレのケツの中に入ったままだ。テンパりながら辺りを見回したりしながらも、ゆるゆると無意識にディルドを動かしてたりする。 「あっ、あああっ! 何コレ? 何コレ?」  ビリビリ&完起ちの原因は、やはりオレの中にあったようだ。何だこれは? ケツの中のとある場所にスイッチか何かがあるようで、そこを刺激すると身体中に電流が走りムスコが完起ちする。気が付けばオレのムスコの先っぽは、所謂ガマン汁と言うヤツで濡れそぼってる状態だ。 「あ、は、あ、あ、あぁぁ、あ……」  オレは猿だ。オナニーを覚えたての猿だ。一旦その場所を憶えたら、もうそこだけを刺激しまくりなんだ。気持ちいい。感じまくって、ディルドで刺激するのをヤメられない。もう何も考えられない。こんな、こんな刺激があったなんて。 「んんっ、あ、はっ、ぁぁぁぁ、ぅ、んー、あ、あ、あ、あ、ああああああっ」  いつの間にかディルドを持つ手は左手になっていて、右手は、オレのムスコを擦りまくっていた。ムスコは既に臨戦態勢で、普段に比べるとその半分以下の回数を擦っただけで昇天。逆にその気持ち良さは、単にムスコを擦るだけと比べて数倍以上の差があった。  何だこれは……。  今までこんな快感は知らなかった……。  昇天後、暫くは茫然としていた。未だディルドはケツの中である。オレは今までこんな快感は知らなかったが、一度でも知ってしまったらもう戻れない。と言うか、世の男性は洩れなく全員アナニーをやるべきだ。やらないヤツは深い快感を得られない。つまり人生において損をしていると言うことなんだ。もちろんチンコだけでイクのも悪くないが、快感の度合いから言うと雲泥の差。まさしく月とスッポンだ。  賢者タイムに入ったオレは、今までの何も知らなかった人生を嘆いた。もっと早く知っていればと後悔もした。悔しいが、これを送ってくれたアイツには感謝だ。頭おかしいんじゃないかと思ったことに対しては、素直に反省しよう。  その後オレはそっとケツからディルドを抜き、それから感謝を込めて、今まで以上にキレイに洗浄&消毒した。これが、オレの今後の人生の必須アイテムになることは、疑いようが無い。心から大切にしようと思った。  あれから三か月、オレはもうアナニーの虜だ。さすがに毎日はしてないが、その頻度はかなりのものだ。何か、やらないと身体が疼くんだよ。身体と言うか、正確にはケツの奥がだな、うん。  一番最初に箱に入っていたボトル類は既に使い切ってしまい、今はネットで大量注文したやつに手をつけている。どうせ使うものだから、チマチマと注文するのが面倒だったのだ。なので今使ってるのが何本目かは覚えていない。おかげで懐はかなり厳しくなってしまったが、これについては後悔はしていない。むしろオレの人生に潤いを与えるための物だから、金を惜しんではいかんのだ。  今愛用しているディルドは五本目、つまりパステル色の中で一番太いヤツだ。本物のチンコに比べると細身なのだが、逆のこのサイズだからこそ楽しめるのではと思っている。むしろオレのケツにはこのサイズが丁度いい。  ただ時々だが、もっと太いもので貫かれたいと思うときがある。愛用しているディルドよりもっと太く長いもので……。もちろんそんなことになったら、オレのケツが破壊されること間違い無しなのだが。なので、なるべくそんな事は考えないようにしている。しているが……、心の奥底の願望はどうにも消すことは出来ないようだ。 「はぁぁぁ……」  そして今夜もまたオレは、こいつを手にとり溜息をつく。  こいつとは、箱缶の二段目に入ってた、黒くて太くてグロテスクなディルドのことだ。何つぅか、妙に生々しいんだ。色は黒だが、それ以外はまるで本物のチンコのようなんだ。しかもよく見ると、微妙に血管が浮いていて……。そしてさっき発見したんだが、こいつは真っすぐじゃなかった。本物のチンコのように、微妙に右に曲がっているんだ。  こいつを使ったら、もしかしたら本物で貫かれてるようなカンジがするのかもしれない。もしかしたら、ものすごく気持ち良いのかもしれない。一方ではそう思いつつ、もう一方では野郎に犯されるなんて絶対無理と思ってるオレもいる。うーん、だからこその偽チンコなのか?  今のところ自制は効いてるが、今後は分からない。もしかしたらオレの愛用品がこっちの偽チンコになっているかもしれない。でもそこまでいってしまったら、オレはディルドではなく本物を求めてしまうのではないかと不安になる。きっとそれは無いとは思う。思うが……、思いたい。切に。 「はぁぁぁ……」  そう言えば、久しぶりにアイツからメール来ていた。予定通り来月には帰国するそうだ。そして、アイツのメールにはこう書かれてあった。     新しい扉の向こうはどうだった?     才能があると言ったオレは正しかっただろ?     興味があるなら次の扉を教えてやろう     きっとおまえは気に入るハズだ  やはり偽チンコは使うべきだろうか?  次の扉を開けるために……。

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