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第3話
その後、別の場所にいたランさんとナギさんに今日の成果を伝えて、こういうわけですのでおいしくいただいてきますと両手を合わせてお礼を示した。
二度と女を引っかけられないくらいぱくっと行ってこーいと男前に送り出され、イベント終わりに衣装を着替えメイクを落として合流。
「え、化粧ない方が美人なんだけど」
「どーも」
作弥 と名乗ったイケメンカメコくんは、出会い頭にそんな褒め方をしてきた。そういうところがなんともチャラい。
「どうする? カラオケでもいいし、お茶でもいいし」
その過程はどうでもいいのか、特にがっつくわけでもなく余裕の選択肢を与えられる。それはきっと、俺たちがアフターして今日の感想を語り合うようなものではないんだろう。
そういうことなら、俺にとっても無駄な時間を過ごすつもりはない。別に親睦を深めるにために来たわけではないのだから。
「カラオケもいいけど、俺腹減っちゃったなー。ついでに汗かいちゃったからシャワー浴びたい」
「……へえ」
あくまで軽い調子で俺の欲求を伝えると、一拍置いて作弥がその意味を飲み込んだ。まあ、これでわからない男ではあるまい。
「じゃあ、食事ができてシャワー浴びれるとこあるけど、行く?」
案の定最終的な目的地が最速で選択され、こちらも何気ない調子で誘われる。
うわぁ、イケメンって悪い顔でもイケメンだな。
ともかくそういうわけで、余計な過程をすっ飛ばし、目的のホテルへ。
若干古めかしく、そのせいか古式ゆかしい室内はとてもわかりやすいラブホらしく、むしろセットのようだ。
実際こういうところで撮影する人も多いと聞くし、確かにこの非日常的な空間は普通じゃないコスチュームも違和感なく受け止めてくれる気がした。
「シャワー浴びてきたら。その間になんか頼んで……」
「それより」
部屋に入り、ここでも遊び人らしい余裕をかます作弥の言葉を遮って、持ってきたキャリーカートを示す。
シャワーも食事も後回し。余計なやりとりは全部取っ払って必要なことだけをしようじゃないか。
「どうする? このままでする? それとも着替えてこようか?」
「……せっかくだから着替えれば?」
あくまで俺が着替えたければ、という態度でにやりと笑う作弥。
ここまできてがっつかないとは、普段飢えていない証拠か。
とりあえず、せっかくだからと風呂場に向かった俺は、ドアを閉め、その中でキャリーに詰めてきた衣装を広げる。
大事な衣装を汚すわけにはいかないので、ランさんが別に用意してくれた服を選んで着替えた。元々地毛だし、メイクはまあいいだろう。
着替えたのは、普通に見れば、さっきの衣装の簡易版。だけどアニメを知っていればそれが売れなかった時に自分たちで用意した衣装を模したものだとわかる。こんなところにもちゃんとこだわるランさんがさすがだ。
本来なら女装というかコスをしてセックスするような倒錯的な、というかある意味背徳的な趣味はないけれど、まあ今日だけの趣向としてはいいだろう。まさしくコスチュームプレイだ。
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