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第21話 気張る
嗚呼…!この日が来た。父さん、母さん、キタよ!
緊張するったらない。まるで就職活動で大企業の面接を受けるような気分。
普通に考えたら学力、威力、能力は桁外れの低い数字しかない俺にはこの場所に居ることさえ場違いなハズだ。もう奇跡的だと思うんだ。
ホンっと母さんどんな裏工作したの気になる。けど気にしちゃ駄目だ。
ちょっと可哀想なオメガになった自分自身の一生を決めることになるこれは大事な取引!!
俺にはアルファを誘うフェロモンが出てるんだって言うし、えろいことって男の人にどうしたら良いのかさっぱり判らないけど、長男の理玖さんを、お、俺の最大限の色気 で振り向かせてロックオンさせて見せる!
恋愛未体験実年齢だって気にしない、この際。
浴室前に行くと、菩薩のような笑顔で待っていた峰先輩メイドは「坊ちゃんのご指名に違いないからお背中を流しておいで。間違ってもメイド服は脱いじゃ駄目だよ」そういうとポンポンと肩を叩いて行ってしまった。
それだけ……?少し気張りすぎたかもしれない自分を恥じた。
浴場の部屋をチラ見しただけでめっちゃ広いとわかる。
脱衣場には丁寧に畳んである衣服…峰先輩メイドさんが世話をしたっぽい。
俺は黒いタイツだけをするりと脱いだ。自分の体に自信がある訳じゃないけど人が風呂に入ってる所に服を着て入るのってどうなんだろう、変な感じ。
かいちゃんから貰ったカプセルの抑制剤を口に含んだけど、脱衣場には飲水が無いのでそのまま口に含んで浴室のドアを開けて入った。
「わー…」
広いガラスの窓からは外に庭園があるのかポッポっとオレンジ色の明かりが漏れていて、足で踏んでいるのは大理石の床、浴場にも遺跡っぽいのがあって蛇口がシーザー…怖い。
湯船はさながらゲームのRPGに出て来る泉のようだった。その中心にもじゃ頭の長男がくつろいでいた。
まだ俺が入って来たのは気が付かないようで、近くにある蛇口をひねって水を掌にすくおうとしたとき、「誰だ!メイドを呼んだ覚えはないぞ」
突然の大声にバシャ―と手に溜めていた水を顔に沈めて、口に含んでいた薬も呑み込んだ。
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