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第24話 僕の望み ・side夏威2
戸籍上はまだ園城だけど、現在お世話になっている鷹見と言う名を借りて鷹見カイと名乗ってメイド職に身を置いてるわけだけど、使用人でも本宅じゃない限り園城家の息子の顔なんてハッキリ知らないはず。数週間前はベルボーイで僕は潜入している。
時々、こうして隠れ蓑になって長兄だけに与えられている別荘に来ているわけだけど、面白いくらいみんな気付かない。セキュリティとして良いのか悪いのか…兄の性格のようにこの別荘の使用人は穏やかだ。
「すみません鷹見さん、あの上の取ってくれませんか」
「はーい、良いですよー」
「鷹見さんって身長高いから助かるわぁ」
物品を補充するために戸棚の段ボールを難なく取り出して渡した。
「そう?そう言ってくれると嬉しいな」
実際にメイドさんたちと一緒に屋敷内を動いて掃除や交流を取るのは楽しかったりする。
「……っ」
なんだろ、メイドさんたちが頬を赤く染めて無口になった。
まさか僕が男だって気付いてる…訳ないよね。女として仕草や雰囲気、言葉など女装として完璧だよ。元演劇部だし。瀬那くんには自ら男だとバラしたけど、あの子はめちゃくちゃ驚いていたな。
『きゃあーーーー!!』
数人のメイドたちが揃って大声、いや、悲鳴を上げた。
何事かと思って、僕や周辺のメイドも駆け込んだ。
なんてことなんだろう……。
腰にタオルを巻いて壁に凭れ掛かった理玖兄さんの姿があったのだ。
明らかに体全身濡らしていて……。
ちょっと待って……瀬那君は?
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