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第26話 僕の望み ・side夏威4

※近親相姦の表現があります。お気を付けください。 「夏威?…何故……ッ」 「ごめん。後でお叱りを受けるから……瀬那くんを介抱してあげて……それだけで良いから」 「馬鹿な……!」 「瀬那くんは、父さんが決めたオメガの子なんだ。僕が見るに理玖兄さんに託される子だよ」 浴場に向かうと、理玖兄さんを浴室に精いっぱいの力を振り絞って閉じ込めた。 これがお節介だってわかっているよ。 でも、こうでもないと理玖兄さんは人を抱かない。 オメガだろうと、いや、オメガだからアルファとして抱けない。 不能じゃないはずだ。 ドンドン 「かい!!いい加減にしろ……か、い!」 「理玖兄さん……ごめんね……」 苦しそうにしていた兄さんは、瀬那くんの発するフェロモンによって禁欲症状が薄れて理性も戻ってきている。 瀬那くんをどうか『番』にしてあげられるような子にしてあげてよ。 それが、僕の望みなんだ。 「僕の事なんて忘れて……兄さん」 2年前、僕と兄さんは禁忌を犯した。 僕はアルファから突然変転してオメガになったあの日からだ。 親類……特に父親は厳格なα主義者でΩに変転した息子の僕を信じられなく毛嫌いし避けるようになった。 オメガとして初めてヒートが来た日、理玖兄さんに介抱してもらった。それが始まりで僕と理玖兄さんの情事が始まった。理玖兄さんはあくまでオメガの介抱としてのセックス。 僕は……今まで感じたことのない昂ぶりを覚えて、理玖兄さんに注がれる精を何時しか愛おしく感じるようになっていった。 元々堅物で色沙汰は無縁で、変な遺跡趣味と仕事に夢中になる至極純粋な人だ。 僕とは大違い。 そんな理玖兄さんを快楽の毒に浸してしまった僕は、毒婦だ。 父親に近親相姦の兄弟同士で体を繋げる禁断の情事の最中に見られるまで、僕にとっての理玖兄さんは遠かった。 『夏威を園城家から除外するならおれも勘当してください!夏威を一人に出来ないし、おれは夏威を伴侶として選びますから!』 そう担架を吐いて、二人で園城本宅を出た。 でも、僕はやっぱり理玖兄さんは僕の兄として強くて、理玖兄さんは園城家になくてはならない人なんだと改めて思った。 その証拠に、理玖兄さんは僕を『番』として交わす項を噛むことが出来なかった。 わかっていたことなんだ。すべてこうなるって事がね。禁忌なんて神様が許すはずがないよ。 僕は理玖兄さんから離れて、父から目を盗んで鷹見家の睦月さんに拾われた。 いつまでも居られないけど、せめて理玖兄さんが普通に戻ってお嫁さんを貰えたらなって……そう思っているのに、1年前から理玖兄さんが遺跡を求めて世界各地を回っている噂を聞いて憂鬱に過ごしていた。 だから、今回湧いた嫁取の話しは瀬那くんが理玖兄さんの幸運の星で、僕の希望の星なんだ。

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