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第30話 目を開けたら
目を覚ますと、大先輩メイド峰さんの顔のドアップがあって「ひゃっ」と、心臓が凍り付いたけど、見回したら自分の部屋 のようだった。
「起きたようだね、寝起きはさぞかし爽快だろう?」
「あ……みね、さん……ども。」
あれ、俺……ドックンと心臓が波打った。決して峰さんにときめいた訳じゃないはずだ。
頭に思い浮かんだのは風呂場でのことで……あんな醜態をかいちゃんに見られてもどかしくて、穴があって入ったら絶対に一生出てきたくない……。目線を回したけど部屋にはかいちゃんは居なかった。
俺が強制発情してる時、かいちゃんがアルファの抑制剤を体内に挿れたのでオメガでは強すぎるせいで気を失ったと説明してくれた。
強制発情という事は抑制剤を誤って誘発剤として俺に渡したって事か……アルファの抑制剤も持ち歩いてるんだ、かいちゃん。
『ごめんね、瀬那くん……こんな事をさせて……ホントごめん……』
かいちゃんが辛そうに声を振り絞って謝ってたのがまだ耳に残ってる……。
「それにしても、アンタがオメガだとはねぇ……ベータのような平坦な顔をして」
平坦な顔ですみませんね……ただ、親の顔に似ただけです。
ふっーと溜息を付くと峰さんはベッドの端に腰を掛けた。様子を見ると思いに耽ってる……背中を流しなさいって言われたのにあんな事になって……背中を流すどころか理玖さんには気持ち悪がられて逃げてしまったから憤怒を通り越して嘆息し落胆したのかもしれない。
だとしたら、クビを宣告されに来たのかも。母さんになんて言おう……言い訳するのも疲れたな。
「あの美女っ子が夏威お坊ちゃんだったとは……この峰が気付かなかったことはまだまだ園城家のひよっこだねぇ」
美女っ子……かいちゃんのこと?そうだ、かいちゃんはどうしてるんだろう。
俺、やっぱり嫌われたのかな……気持ち悪いって……オメガって発情したらめちゃくちゃ変態になるんだ……。
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