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第32話 かいちゃんからの手紙 2

『――拝啓、瀬那くん 僕はオメガの瀬那くんを利用しました。 こんな書き出しで、突然で驚いたよね。 実は、僕は園城家の性別詐称で永久追放?と以前教えた方の三兄弟の真ん中の人間なんだ。 今は“だった”なのだけど、その理由として、本当は瀬那くんに話すことではない。しかし真実は時期に耳に入るし、僕から事実を述べたいと思い手紙を残そうと決意したんだ。 僕はアルファ性から突然変転してオメガ性になった。先祖にも居た事実があるからきっと稀か隔世遺伝的なものかもしれない。僕の父はそれだけでは怒らないよ、ただ、オメガの発情期が来て僕の兄が僕のすべてのヒートに対して対処してくれた。それは君が体験した事なんだけど――兄と僕はヒート以外にも関係を続けることがあって、その場面を厳格な父に見られてしまった。近親相姦、そして僕が誘ったと――そうなんだけどね。僕だけが勘当されるはずだった。兄は僕を一人で出ることを許さず、一緒に駆け落ちまでしてくれた。 僕は兄が好きだった。 第二性の変転は僕にとっては残酷なんかじゃなかった。神様がくれた奇跡とも思った。 心置きなく兄と愛し合える。兄との子を孕める。 愛があるし、愛し合っている……僕は、幸せの絶頂にいた。 しかし、幸せは儚い夢だと現実に突き落とす。 『番』になろうと二人で誓い合ったとき、僕たちは番えなかった。 兄がどうしても“できなかった”のは、噛付きと鎖の誓い。 第二性だとしても、実の兄弟の血は拭えない。 脳髄まで深層深く巡り込んで邪魔をする。 でも、それは常識からしてはまともな判断なんだ。 兄は狂っていない。狂っているのは僕だった。それだけ。 兄は弟に禁忌を犯したと思い込み、恐れた。それ故にオメガを娶ることが恐怖に思っている。 その感情を与えたのは僕だから。 だから、僕はオメガの瀬那くんを利用しました。 この別荘に呼んだのも、情報の動向を傾斜して瀬那くんの家に通信したのは僕。 どうしても、兄に会って欲しかったから。兄を僕という呪縛を解いて、心優しくて可愛らしい瀬那くんに託したいと思ったんだ。 上手くいったかは分からない。ただ、少しでも兄の心に響いてくれたらいいけど、知ってる通りあの人はヘタレだから。 遺跡よりオメガのことをもっと興味を持ってほしいね。 こんな兄だけど、瀬那くん、よろしくお願いします。 園城家に戻って、家督を継ぐのは兄だと思っている。 その横で支えて欲しい。 ではね、世界のどこかでまた、会えたらいいね 瀬那くん、大好きだったよ♡ 夏威。』 ――この手紙を最後まで読みたいのに、涙が溢れて止まらなくてどうしようもない切ない想いが込み上がった。

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