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第35話 男前の美形さん
応接室に入ると、俺が見た髭もじゃの理玖さんでは無くて散髪したらしい髪も整えて髭も剃った初めて理玖さんの素顔を見た俺は一瞬、躊躇した。
なんて言ってもめちゃくちゃ男前の美形なので驚いた。だってまるで髭もじゃの人とは別人だから。鉄砲の扇風機を持って遊んでいた変人のようにも今は見えない。
かいちゃんも美人さんだったけど、俺はすべてが凡庸とした中で暮らしていたので美形という人種…それがアルファなんだろうけど、ここにきて初めて見聞きしたというか……。
それに、Tシャツにカーディガンと黒のスリムフィットパンツのラフな姿だけど、見るからに貴公子然としているのだ。
俺の姿は普通の白Tにカーキー色のパンツの装いでごく普通家庭の姿を晒すしかなかった。
そんな男前の理玖さんが俺に和らかな笑顔を小さく見せて手招きをした。
「すまないね、本来ならおれの方から君の部屋に訪れて行くべきなのだが……オメガ同士話があると峰さんから散々恨まれてね……」
「あ、いえ……そうですか」
「瀬那君、こちらへ来てお茶でも飲みながら話さないかい?」
部屋にはレックス…じゃなくてメイド長さんがティーワゴンを引いて紅茶とお菓子の入った3段トレータワーをテーブルに置いた。
つい癖で俺も手伝わなければと思って手を出したらレックスに手でパシッと払われて「理玖様のお客様としての来客と見なしています。黙って食しなさい」
レックスこわい……なんか言葉も来客用じゃないよ。
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