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第38話 お暇します
「瀬那ちゃんも行ってしまうの?」
「はい、短い間でしたがありがとうございまひた、ました!」
「今、噛んだわね。それにしても瀬那ちゃんがオメガだったのにはびっくりたまげたわ。今でも信じられないくらい……どう見てもベータだと思っていたから」
「そうですよね!ハハハ 自分もです。ところで俺が男だってことに驚かないんですね……」
「そんなのはどちらでも良いのよ。それにしてもオメガねぇ……大変よこれから。あなた面白い子だっから心配だわ」
「え、おも?あ…それは大丈夫ですって!また平穏な学生に戻るだけですっ!見た目ベータだし」
前を向く俺に後ろ髪を引っ張るのはお世話になった先輩メイドさんたちだけど、そろそろバスの時間とかもあるので解放されたいです!
男とバレて、更にオメガとバレて……。
理玖さんはあれからかいちゃんを探してみる、その後二人で今後の話をするよと言ってくれた。その前に願掛けで登山をするとか言っていたけれど……あの方は自由人なのだとちょっぴりかいちゃんに同情する。
はぁ…。
俺のメイド修行理由も絶たれて家に戻ることにしたのだ。先輩メイドさんはここで働きなさいよと涙ぐましい事を言ってくれたけどそんなことも出来ないし、居続けるなんて出来ない。
俺は俺でまた未熟な情報を補うためにオメガのなんたらを学んで、新たに番う人を求める旅に出るのだ。
それにしても国一番のお金持ちの御曹司でも、いろいろ深い事情があるのだと知った今回だった。衝撃的だったけど少しは勉強になったかも……。
さぁ、帰ろう。俺の日常へ――。
なんて思っていた俺は、この後、凝りもせずに再び母さんの金の左団扇の策にのせられて新たに転校をさせられるんだけどね――!!
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