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第43話 高所恐怖症
一人残された俺は、もう一度40階は有りそうな高層タワービル(これが学園なんて誰が思うんだろ)を見上げてごくりと喉を鳴らし、自動扉の前に立つと静かに開いたドアの中に足を踏み入れた。
鏡のようにピカピカと磨かれた広いエントランスに足が竦む。フロントがあって何だか造りはホテルみたいだった。ただ少し無機質な感じがする。人の声も無く匂いも学校の特有な雑混した感じじゃなくて……。
名前を言うとパッパッパと目の前のiPadのようなパネルが開いて、奥のエレベーターにお乗りくださいと案内された。ビビったぁ……フロントのお姉さんがロボットなのかと思った。
「あの、何階に行けば……」
「表示されております。学エリアの階に自動で停まります」
「ありがとうございました」
ぺコンとお辞儀をして、奥にあると言うエレベーターに向かって開いていたのでそれに乗る。
俺一人だ……。電光表示されているのは30階だった。
一気に30階までエレベーターが微小な機械音と共に上昇する。み、耳が痛い――っ
高速で行くのであっという間に30階!!すげぇ。
エレベーターを降りたその先に、大きな窓から見える外の景色に足が竦んだ。
俺は自慢じゃないけど高所恐怖症だ。普通なら窓から見える湾岸とか青い海、広大な山脈……なんて素晴らしい景観に感動をしてるだろうけど、冗談じゃないよーーー!!怖い!!!
なるべく窓の方を避けて壁側に沿って歩いた。気持ち地上30階だと思うとくらくらして来たし気分も悪くなってきた。外から高層ビルを眺めるのは全く大丈夫だったのにな……そりゃそうか。
「君、大丈夫?」
壁に凭れ掛かってよろよろと歩いていたのだろうか、生徒の一人に声を掛けられた。
濃紺のブレザーの制服を着た生徒を見て、やっぱりこの高層ビルは学校なんだ…と変な余裕が自分にはまだあった見たいだ。
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