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第49話 医務室にて 3
(かいちゃん……? ほんとにかいちゃんなの?)
大きな声が出ないのでほとんど口パクだけど、かいちゃんに通じてるみたいだった。
「この姿では初めましてだね、って、これが僕の素っていうかねぇ…」
はにかんでるかいちゃんだけど、いつも見せてくれていた綺麗な笑顔。
さすが美人かいちゃんなので白衣も似合ってる……はぅ…色っぽさもあるのでちょっといけない若先生みたいな……ハーッ!
(かいちゃん!! ど、どうしてここにいるの!?)
「瀬那君は、何故こんなところまで来たの!?」
「(…あ…えっと…)」
俺たちは同時に疑問をぶつけ合ったみたいで……思わず手を繋ぎ合わせた。
こんなところがメイド時代(つい最近だけど)のバディとして意気が合っちゃうんだけど。
「おや、君たちは知り合いですか?」
次の言葉を選んでいると医務室の先生が穏やかに言葉を紡いだ。
「はい……ちょっと不思議な出会いがありまして、僕たちはとあるお屋敷のメイド修行をしていました。この先に何があるかわからない身なので何でも職を得ようとして、ねぇ、瀬那君」
うわうわ、そんなハッキリと言っていいの?かいちゃん身元バレない? 確かにこの先はどんな未来があるのかもう俺にもわからないけど、これでも学生だし、何故メイド修行をしたのかってそれこそ不思議な話になってないかな。
「……なるほど、そういう事ですか。野村…君でしたね、園城家のメイドのバイトを経験したと。夏威さんも一時期、わたしに紹介されるまで別荘に居たと聞きましたから」
「え、まって東条先生……な、なぜ、そんな話を!?」
かいちゃんが動揺してる……ってことは、身元はバレてたんだ!?
「あなたを紹介した鷹見はわたしの甥です。園城家の内情を少しばかり聞いております故、それに夏威さんはオメガ性だとしても、そのような極上の美しい姿形の美形は優等のアルファ種しかおりませんからね、事情が斯く斯くおありなのだという事は承知しておりますから、心配なさらずどなたにも言いませんよ」
「……」
そ、そうだって……かいちゃん、良かったね……?
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