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第51話 医務室にて 5

「かいちゃーん……?」 ドアを開けて顔だけ覗くように伺う。 驚いたことにこの部屋にもベッドが二台あって――天蓋のカーテンが閉まっていたところから、かいちゃんが出てきた。 「頭はもういいのかな? 打ちどころが悪かったら後遺症として後で出てくるから再度診察することだよ」 俺は誰か休んでいるようだったので足音を立てないでコトと部屋の中に入った。 「ん……はい、そうする」 俊足だった……俺にはそう感じた。 壁側には机があって、何をされたのか正直わからなかった。 なんていうか……視界が反転した。 かいちゃんが俺の両方の手首を強く掴むと、机の上に上半身を背後から押し付けて倒されたんだけど……! 真上にはかいちゃんの整った綺麗な顔がある。その表情は感情がちょっと読み取りにくく何処か妖しい目の光に異様な雰囲気を醸し出していることに気が付いた。 え……? かいちゃん? あ、あの、これって……!? かいちゃんの上半身が重みになって机の上に後頭部が擦れて痛い。 綺麗な顔がゆっくり降ってくる。視線が唇に留まるのはなんでだろっ! 見慣れていた黒髪から金髪に代わって右肩に垂らしている長い髪、瞬きをしたらパサッと揺さぶりそうな長い睫毛で覆われてる綺麗なビー玉のような強い瞳……かいちゃんはやっぱり迫力のある美人さんで……俺の心臓はドキドキと早い鼓動で打ちのめされてる。 それにしても血色がよく形の良い唇……こんな真正面でかいちゃんの顔を観察したことなんてなかったからマジ見をしてしまう。 か、かいちゃんの唇って柔らかいのかな? 乾いてカッサカサの俺の唇と違うと思うんだ。ハァ……ハ! も、もももももも! かいちゃんに……いやいや、かいちゃんを想ってる理玖さんに対して、これはめっちゃ後ろめたいから妄想ヤメーー!! (かいちゃんが美人さんなのが悪いっ)  「何で抵抗しないの?」 ――ふぇ? 「こんなに簡単に押し倒されて、まったくオメガの自覚が無いよ!」  真正面にある惚れ惚れとしていた美しいかいちゃんの表情は眉間を歪ませ、大きく開かれていた瞳は極端に細められて、形の整った唇は大きく溜息を吐いていた。

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