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第2話 一番勝負(真秀)

学校祭当日……運命の二日目。 祭の時の空気って、そわそわしてて、いつもと違う感すごいんだけど、今日はいつも以上。 オレは謎空間になっている校内をびくびくと歩き、控え室だと指定された社会科準備室に行く。 なあ、なんか変なカッコウの奴、いっぱいいるんだけど、今年どうなってんの? さっき、ダースベーダーが校長室に入ってったよ? 「変な奴だらけだ」 「そりゃあ、お前が言い出した賭のせいでしょう」 何を言ってるんだって、一緒に歩いていた貴志 洸大(きし こうた)が肩をすくめて呆れた顔をする。 洸大は、オレと史時のトモダチ。 普段は生徒会の副会長をしてる。 会長は当然、史時。 「なんでだよ。オレの賭けなんて、他の奴には関係ないじゃん」 「なくても祭りを盛り上げるにはいいネタだよね。協力するにも、妨害するにも、ついでに仮装しようって気になってもおかしくないし」 そういう洸大は、制服のまま。 やたらめったら仮装人数増えても大変だから、という。 プツっと、校内放送のスイッチが入る。 『注意勧告。西校舎前に集まったホグワーツ生徒諸君。仮装時、三十センチ以上の棒状の小道具は禁止されています。すぐに、箒と杖を控え室に戻してください』 なんだそりゃ。 「持ちたくなるのはわかるけど、な」 「クディッチの試合ができる訳じゃないんだし、こっちのルールは守ってもらわないとね」 洸大と話しながら全身で同意を示しているのは、どーもくん。 おおう。 どこで合流した、どーもくん。 っていうか、お前の中身、誰? 「今年は特に、顔隠した仮装が多いよ」 「そうなん?」 「小柄な奴ほど、顔隠してる。お前の影武者でもやってるつもりなんだろうな」 「それは味方? 敵?」 「どっちも」 控え室に入って、届いてた荷物を確かめる。 仮装の準備、三セット。 「ひとまず、これかな」 一番小さなセットを手に取る。 「それを選ぶお前の基準がわからんな」 着替えてどうよと見せたら、洸大が額に手をあてて、うむむと考え込んだ。 「禿げたオレでもいいのかなって」 「ああ、そう……」 遠くで集合してるのが聞こえる。 今日の注意事項が伝達されて、開場宣言。 皆が動き始めたら、仮装したオレも紛れ込む予定。 「よし、行くか」 段ボール製のカート、真ん中に入ってハンドル持って、ちっちゃいこの車ごっこみたいになったマリオとルイジが競歩で廊下を行く。 走ると怒られるから、競歩で妥協してるのか? その後ろに、スパイディ。 あいつ誰かわかんないけど、シルエット、オレに似てる。 一緒に歩いてるのが、でっかいウルトラマンで、国境超えた特撮交流? って首を傾げた。 まだ開場してそれほど時間もたってないのに、カオス。 控室のある校舎から、職員室までの最短距離を行こうと思って、中庭にでたところで、後ろから抱きつかれた。 「これカトチャン? かわいいね」 マジか。 秒殺だったぞ。 「真秀の奴、禿でちょびひげでもお前が萎えないか、気になってるらしいぞ」 「そんなこと? 萎える訳ないじゃないか」 「だよな。史時の真秀愛は、変態じみてるもんな」 「超愛しちゃってるからね」 麗し人気者の会長様が、禿げづらちょび髭の『カトチャン』に抱きつく図。 すげー、シュール。 外野から奇声があがる中、なにごともなかったように、史時と洸大はふざけた会話をする。 っていうか、ホントに秒殺すぎて、オレ、声も出ないんですけど。 「あ、真秀。何故か僕も仮装することになっちゃったんだよ。後で会うときは別の格好しているけど、気にしないでね」 いや、それ、めっちゃ気になるから。

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