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第26話

おかしい。 自室のベッドの上で長い四肢を投げ出しながら、舛花はぼんやりと天井を見つめていた。 おかしいのは天井ではなく、このところの自分自身についてのことだ。 おかしくさせているのは数週間前にやって来た男娼見習い。 初めはただの鬱陶しい奴としか思っていなかった。 舛花から自由を奪う、目の上のたんこぶのような存在だった。 だが、舛花の嫌がらせを跳ね返す根性と必死な姿に考えを変えさせられ、今では真面目に彼を指導している。 あんな痩せた体躯でゆうずい邸の男娼になりたいとか、無謀で危なっかしくて見ていられないから仕方なく構ってやってるだけ。 決して特別に思っていたりなどしない。 そう思う一方で、日々升麻という存在が自分の中にじわじわと侵食しつつあるのだ。 そして昨夜、更に舛花を困惑させることが起こった。 いや、自ら起こしてしまったのだが。 キスなんてするつもりなかった。 いつかは教えなければならないことなのだが、昨日あのタイミングでするつもりは全くなかった。 だが、畳の上で膝を抱え頑なに秘密を守ろうとする姿を見ていたら、妙に胸がもやもやして、暴きたくなって。 気づいたらキスしたことあるのかと訊ね、半ば強引に唇を奪っていた。 サラリとした髪から香る清潔な香り。 最初は驚いて見開いていた瞳が、熱を帯びたものに変わっていく様に、得体のしれない愉悦と高揚が湧き上がってきて、全身を鳥肌が覆った。 数えきれない人間と肉体を重ねてきた舛花にとって、キスなんてちょっとした挨拶のようなものだ。 それなのに、升麻との口づけは今までしてきたものとは全く違った。 たかがキス、なんてことのないキス。 それ以上の事は一切していない。 だが、升麻の唇の感触や表情を何度も何度も頭の中で再生してしまうのだ。 「あぁ〜〜調子狂う」 舛花は頭をガシガシと掻きながら、どうにも理解できない感情を吐露した。 一人部屋だし誰も聞いていない、そう思っていたが、突然ぬるりとした感触を股間に感じて飛び上がった。 「ん〜…やっぱりだめかぁ」 いつの間にか菖蒲が舛花の股間のあたりにいて、悲しげに肩を落としている。 「いつのまに!?ってか何してんの…」 「今日こそエッチしたくて勃たせようと思ったんだけど、全然元気にならないの」 菖蒲はそう言うと、全く反応していない通常状態の舛花の陰茎を残念そうに見つめた。 「だから、そういう気分じゃないんだって」

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