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第5話 奇妙な邂逅

 あれから一週間が経った。  月飛に付けられた根性焼きは消えず、用足しの度に日向を惨めな気持ちにさせた。  だが悪いことばかりではない。今日は土曜日だが制服に着替え、月飛の車で高校まで向かう。なぜなら文化祭当日だからだ。 「帰りは何時くらいになるんだ?」  校門前に到着した月飛が不機嫌そうに聞く。 「片づけもあるから遅くなるよ。それからご飯行くだろうし……」 「遅いのか。残念。すぐに帰らないと、にいちゃん寂しくておかしくなってしまいそうだよ。先週も一日いなかっただろう? 今日もクソガキと一緒なのか?」 「違うよ。クラスのみんなとだよ」 「ふうん。羽目はずすようなことはするなよ」 「うん、わかってるって」  日向は月飛の視線から逃れるようにして助手席を降りた。 「おはよう! あれ? ヒナちゃん車なんだ。どうかしたの?」  愛らしい声に呼びかけられる。振り向かずともわかる。しかし日向は声の主を振り返れなかった。 「……呼んでるぜ、日向。可愛い子じゃないか。もしかして彼女か? にいちゃんにも紹介してくれよ」  ドアウインドーを下ろした月飛が人好きのする笑顔を振りまいて聞いた。 「ヒナちゃ……日向くんのお兄さんなんですね。初めまして、ミサキです。日向くんのクラスメイトです」 「よろしくねミサキちゃん。日向とはもう長いの?」 「そんな、そういう関係じゃないです。たまに映画を観たり、ご飯に行くくらいで……」  日向を差し置いて最悪の展開が繰り広げられていく。口を挟む余裕すらない。 「あ、もうこんな時間。それではお兄さん、日向くんお借りしますね」 「夕飯までには返してくれよ。大事な弟だからね」  エンジン音が遠ざかっていっても、日向はその場を動くことができない。 「……どうしたの、ヒナちゃん?」  一生家に帰りたくなくなった。

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