61 / 110

第40話+α

革のアタッシュケースの中 ここ最近レギュラーになりつつある黒いベルベット地の小箱があるのを思い出す 中身は、勿論この世で1番硬い物質が嵌め込まれたアレである ここら辺で渡すべきかな? なおの気持ちをまだ、確認してないのに? 私への想いをなおの口から直接聞きたい気持ちと早く私だけのものにしたいという欲望がせめぎ合う 迷った挙句、それをパンツのポケットの中に突っ込む あ、白衣着たままだ 只今の時刻22:23 この角を曲がれば、目的地はもう直ぐそこである 隠れ家の様にひっそりとたつその料亭は、雰囲気ある佇まい いおりと書かれた木の看板が迎えてくれる 慌てて入ると女将さんらしき人がびっくりした顔で固まる 「うちに通報があったんでしょうか?」 「え?」 指で差されて自分の格好をみる ……しまった、白衣 「いえ、友人と約束していたのを忘れていて慌てて……」 「ご予約の方ですか?」 「あの……名波で予約が入って……」 「確認致しますので、少々お時間いただきます」 「はい」 待てよ……そもそも、あの捻くれた性格の名波のやつだ 偽名となんとか使っている可能性が高い じゃあ、部屋はどうやって…… 『制限時間は、23時』 なぜ、23時なんだ?キリが悪い 「申し訳ありません。その様なお名前でのご予約は、承っておりません」 「では、あの。こちらの菊の間に案内していただけますか?」

ともだちにシェアしよう!