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第57話
ほんのり焼き色のついた丸い形
うん、上出来
部屋中にバターの香りが広がる
ちょうど、インターホンが鳴った
「はい」
「文、参上」
「ちょっと待ってて。今行く」
急いでドアへと走った
「はー、やっぱり美味しいよね。なおの手作り。望月先生と暮らし始めてからだよね」
「うん、時間に余裕ができたからね。色々試してる」
いい嫁さんになりますわ、なんて呟きながらクッキーを食べている
「ほいで、本題が?」
「あ、うん。これ。この封筒」
「うわっ、なんか不気味」
何度みても異様な雰囲気のある白い封筒
「......今朝、家の郵便受けに入ってたんだ。直接投函されたものだと思う」
「とりあえず、開けてみない?」
「そうだね。2人だし」
ペーパーナイフを持ってきてスッと切り裂く
中には1枚の紙が入っていた
「ね、ちょっと見て。これ」
差し出されたのは3角形の白い紙
「封筒の蓋がどうかしたの?」
「問題は、この裏だよ」
ひっくり返すと縁部分にびっしりと薄い刃物
「これ、カッターの刃先だよ。古典的な嫌がらせ。ペーパーナイフ使わなかったら、なおはこの刃で指を切ってた」
「!」
「明らかになおを傷つけようとしてるね」
よく見ると刃は、全てボンドで取れないように丁寧につけられている
「この手紙の内容も......」
“目が合うと彼は、私に笑いかけた”
“私も彼に応えた”
“彼から愛されているのは、私”
“あなたじゃない。彼を返して”
「こわっ......」
「ただいま、なお。どなたかいらっしゃってる?」
「望月先生、おじゃましてます......ちょっとこれ。どう思います?」
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