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運命の番の章 第2話
「やあ、こんにちは。」
爽やかなイケメンが俺の目の前にいた。まことの番のαの雲仙優輝だ。なぜここに?
「なんか一緒にランチしたいんだって。」
え、ちょっと、それなんで?仕方ないから一緒に食事になった。警備上の問題で個室だ。そして、俺はえらく観察されてるんだけど。
「な、何か顔についてます?」
にこにこと笑う顔は誰かに似ていた。あれ??
その時スマホが震えだした。
「あ、ちょっとだけ、失礼します。」
断ってスマホを見るとメッセージアプリに蒼羽からメッセージが入っていた。
『弟から今、千疾と会っているってメッセージが来たが本当か?』
思わず画面と目の前にいるイケメンをニ度見した。
「え?蒼羽の弟さん?」
イケメンはニコッと笑って頷いた。
「正解。雲仙蒼羽は私の兄だよ?」
えええ!???
『目の前にいる…』
と返した。
「ごめんね。なんかほんとごめん。」
まことが手を合わせて謝っていた。
…ってことは蒼羽は雲仙家の御曹司?えええええ??俺はたっぷり5分は固まっていたらしい。
「兄を夢中にさせた可愛い恋人さんの顔を見たくて。まことの話によく出てくる君の名前と一緒だったからもしかしてと思ったら当たりだったわけだ。兄の事よろしく頼むよ。あれで結構繊細だからね。」
とウィンクをされた。蒼羽…意外と兄弟仲いいんじゃないか。つか弟いるって俺に話してくれてないよな。
「そう言えば、千疾君は兄にご飯とか作ってくれてるの?まことの作るご飯は美味しいからのろけてみたんだけど、一向に聞かないから聞いてみたくて。」
箸が止まった。
「え。俺家事しなくちゃだめですかね?」
正直、自炊すらしたことないんだけど。
まことは千疾らしいって笑い転げてた。
そんなこんなで俺は夕飯を作ることに決めた。
スマホで検索した料理を作ることにした。みそ汁、ご飯、生姜焼きだ。
とりあえずレシピ通りに作ったんだけどどうだろう。
蒼羽が帰ってきた。とりあえず部屋でスーツから部屋着に着替えてくる。
「ご飯食べてきた?その俺が作ったんだけど…」
蒼羽は驚いた顔した後全開の笑顔になった。
「おいしい。…また作ってくれると嬉しい…」
なんか涙流しそうな勢いで食べてた。あんまり得意じゃないけど、たまに作ろう。まあ、自分で食べた感じは可もなく不可もなく、だったけど。
「ところで、弟さんに会ったけど、まさか雲仙本家の” 雲仙優輝”さんだとは思わなかったよ。俺の会社の親しい友人の恋人だったし。で、俺はそこで蒼羽の名字を知るより、蒼羽に教えて欲しかったな。」
そういうと蒼羽は頬を指で掻いて視線を彷徨わせた。
「言うタイミングなくしてて。ごめん!!」
両手合せて頭を下げる蒼羽はとてもこの国で有数の財閥を牛耳る一族の御曹司とは思えず、俺はほっとしたのだった。
「わかった。俺も聞かなかったし。おあいこだね?」
俺は笑ってそう言うとそれで終わりにしたのだった。
そ の週の土日、蒼羽はお返しにと、手料理を作ってくれた。…めちゃくちゃ美味かった。
俺は複雑な気持ちになって、不機嫌な顔をしていたらしい。だってね?初めて作った料理がプロ級なんて…αの凄さを思い知ったよ!拗ねた俺に蒼羽が慌てた。
「美味しい。嬉しい。でも悔しい。」
理由を言うと、可愛い、と言われて夜は一晩中啼かされたのだった。
それから俺は料理教室に通ったり、出来る限り作るようにして、腕をあげることに決めたのだった。悔しいからね!
「で、今日は惚気かな?」
ランチタイムのイタリアンカフェで、まことはうんざりした顔で俺に言った。
「ええ?なんで?」
まことは、はあと深く息を吐いてちらりと俺を見る。
「最近、ずーっとαのフェロモンが千疾から感じるんだよね。これ他のαに対してすごい威嚇だし、そもそも最近千疾、色っぽくなったし、やばいよ?まあ、そうとう可愛がってもらってるのはわかるけど。」
俺はかああっと頬が熱くなるのを感じた。え、なに?そんなことまでわかるの!?Ωすげええ!!
「あー、まあ、千疾はβだから、αとΩのフェロモンってあんまりわかんないよね。よかったよ。千疾の職場がβしかいない職場で。Ωいたらやばかったかも。αのフェロモンにあてられて。通常のαとΩのカップルだったら番になった時点で他のΩに影響は出ないんだけど、βだと、番にはなれないからなあ…気をつけてね?」
あー、そういうものなのか。αにもフェロモンあるんだね。Ωばっかりだと思ってたよ。そもそも感じないけどね。
「わかった。なんとか善処…できるかなあ?ってか、俺色っぽくないよ!」
「そうかな?千疾は綺麗だしね。その茶色の髪と目が綺麗な色だし。顔は可愛いというより美人系だし。それに幸せそうだよ?ま、俺も幸せだけどね!!」
ニコッと笑うまことは幸せに輝く笑顔だった。まことの方が、可愛くてもてるよ。Ωの特徴そのものの小柄なまことは黒目、黒髪で、小顔で可愛い系の顔立ちだ。Ωの中でも相当綺麗な方だと思う。きっと俺達ははたから見たら、カップルかもしれないよな。話している内容は女子会に近いけどな!
「千疾!なにやってるんだよ!?」
まことに会うなり、いきなり怒鳴られた。なんで?
「蒼羽さん、跡取辞退したって。」
声を潜めて言ってきた。うん、ごめん。俺が、我儘言ったからなんだ。
「まあ、いろいろとあって。優輝さん、跡取になったからその、外野がうるさくなったりしてる?まこと、何か言われてる?」
はあ、とまことがため息をつく。
「俺のことはいいの。元から覚悟してるし、やっかみくらいは時々あったよ。でも俺はΩでそこそこ家柄がいいから大丈夫なんだ。正式に婚約の話が来てるし。千疾がいろいろ言われるかなって」
こ、婚約!そうだよなあ。そうなるよなあ。
「俺、周りに言ってないし。知られてないから大丈夫じゃないかな?蒼羽が護ってくれると思うしね。俺も、覚悟は決めたよ。βだから蒼羽にはいろいろ我慢してもらうことになっちゃうけど。」
俺がちょっと苦笑しながら話したら、髪をくしゃっと乱された。
「それなら大丈夫だね。お互い彼氏が大物だと大変だけど、頑張ろうね。お義兄さん?」
「え??」
「お互い結婚したら、義理の兄弟になるわけじゃない?ちょっと練習。」
あああああ!!そのことはすっぽり頭から抜けてました!
「え、βの男とαの男って結婚できるの?」
できないよね??
「できるよ。まあ、パートナー的なものだけどね。」
…平等主義万歳。そしてそういうことになったらカミングアウトしなきゃいけない事実に別の問題が…。
まあ、その時はその時だなあ。
「千疾、デートしよう。」
2年目のクリスマス間近、蒼羽が言いだした。
「な、何急に改まって。」
俺を後ろから抱き込みながら言ってきた。
あ。そう言えばデートってしたことなかったっけ?え、付き合い始めて2年以上になるのに!
衝撃の事実に俺は愕然とした。食事とかは行ってたけど、休日一日使うっていうのはなかった。
…だいたい休日はベッドから動かなかったしね。
「せっかくのクリスマスだからね。恋人同士の定番で過ごしたいと思って。土日にかかってるし。」
あ、そうだよなあ…やっぱりそう蒼羽も思ってたんだ。
「じゃあ、どこに行く?泊まりはホテルが取れなさそうだからイルミネーションとか見に行く?どこもかしこもツリ―飾ってると思うし。で、食事して帰ってくる。」
ちゅ、とこめかみに唇が触れる。
「いいね。昼は水族館とか、映画とか。ライトアップの場所調べておくよ。」
頬や、唇に、首筋に、鎖骨に唇が降りていく。そのまま、ベッドに押し倒されて、喘ぐ羽目になった。
まあ、その、嬉しいし、気持ちいいけどね。ちゃんと繋がれないのは少しだけ、寂しい気持ちにもなる。ちゃんと慣らしてくれていて、いつかは受け入れるようになると、思ってる。焦らないって蒼羽は言ってくれている。
クリスマスイブ、ビルの上の水族館に行った。結構カップルが多かった。そのあと、いろいろ店を回った。
高層ビルのライトアップに行って、綺麗な光の装飾にため息をつく。周りはカップルばっかりだった。
まあ、俺達もだけど。
「凄い、綺麗。」
そう言って蒼羽の顔を見る。目があって、愛しむような瞳を向けられて、心臓が鷲掴みにされる。
愛されてるってわかるから、蒼羽の側にいるのは心地よくて、ドキドキして、時々困る。
「千疾の方が綺麗だよ?」
…たまに眼科行った方がいいかも、と思う時があるけど。
その後、予約したレストランでフルコースを食べた。シャンパンで乾杯した。ここ二年で時たま連れて行ってもらってたからだいぶ慣れてきたけれど、ドレスコードのある店は緊張する。
でもとっても美味しかった。
ほろ酔いで部屋に帰ってきてプレゼントの交換をする。。俺はネクタイ。蒼羽はステディリングだった。細い、銀の指輪。害虫よけだと言われた。内側にはお互いの名前。嬉しくて、抱きついてしまった。
お互いの左の薬指に嵌めあって、口付けした。
「愛してる。千疾。」
「俺も、愛してる。蒼羽…」
お互いの指を絡めあって手を握り合う。お互いの熱が上がるのを感じた。
それからはベッドに直行してお互いに盛り上がって、貪りあった。蒼羽の雄は相変わらず太くて長い。でも愛しくて口でしたら飲みきれなくて顔にかかったりした。そうしたらエロいと言われてさんざん啼かされた。蒼羽のエロスイッチは何がきっかけになるかわからない。
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