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⑳
何かに憑りつかれたように、俺は正享を求め続けた。
ホテルの一夜を境に、毎日のように正享を家に呼び寄せ、セックスをねだった。これに意味があるのか正直わからなかったし、正享は何も言わずに俺を抱き続けた。
俺達の間に会話らしい会話がなくなり、正享は俺を抱いた後シャワーを浴びて帰っていく。泊まっていくことはない、一緒に抱き合って朝を迎えることもない。
即物的な快楽を求めるだけのセックス。繰り返しているうちに、自分の心のどこかにヒビがはいりはじめた。女のようにペニスを飲みこみ、喘ぐ自分の姿に意識がいったとき感じたのは違和感だった。
女とするセックスとはまったく別ものである男同士の行為は、少しずつ何かを削っていった。他の男に抱いて欲しいと思うことはない。正享だからなのか?でも恋愛感情は沸いてこないのだ。
行為の最中、正享は言った。
「10年近く、お前の事が好きだった。でも今は・・・わからない。こんな事をしているというのに。」
俺の中を深くえぐりながら、俺を見下ろす正享の顔は泣きそうに見えた。
酷いことをしている。
どんなに頼んでも正享が週末に俺の部屋にくることはなかった。たぶん、本当に逢いたい相手がいるのだろう。それなのに俺は何かに突き動かされるようにセックスを強請る。
すべてはあの日、トイレで起こったことだ。
あの日に俺は何かに囚われた。それから逃げ出し自分に戻る頃合いじゃないだろうか。
なんせ、心が捩れてきた。
もう正享と友達にもどることはないだろう。寿という男と一緒だ。別れて顔を見なくなり、電話もしない、勿論逢うこともない。
違うな・・・俺達はつきあっているわけではないから、別るもなにもそういう繋がりはない。
俺も正享も痩せた。心と身を削るようなセックスを続けているからだ。
扉1枚隔てた向こうで繰り広げられたセックスは俺のどこかを狂わせた。その衝動のままに正享に縋り、あの時の男のように組み敷かれることを望んだ。どうしてそんな欲が生まれたのだろうか。
散々縋ってセックスしても俺の心のなかに正享が入り込んでくることが無い。身体を重ねても心は寄り添うどころか離れていく一方だ。
それに思い至ると、湧き立つような、どうしようもない燻りは少しずつ収まりはじめ少しだけ頭の中がクリアになった。
もうやめよう。
止めるためには、最初にもどってリセットしよう。
きっとそれが答えだ。
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