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正嗣の考えていることがわからないし、俺自身も馬鹿なことは止めるべきだろう。 ホテルに呼び出され、優しさとは真逆の抱き方で正嗣を貫いた。 それなのに、正嗣は抱けと強請り続ける。それをはねのけることができないのは俺の弱さだ。もしかしたら身体だけではなく心をくれるかもしれない。そんな甘ったれた希望が消えてくれない。でも理解している、それは有り得ないということを。 正嗣が俺を求めるのは強迫観念じみた、狂気にも似た衝動だ。自分の何かを変えてしまった俺のセックスに正嗣はこだわり続けている。 トイレで慌ただしくすませたセックスが正嗣の何かを狂わせた。 正気に戻してやりたい。そしてそれは俺達の別離を示している。もう友達に戻ることはないだろうが、少しばかり寂しいだけで、忘れられたと絶望したあの瞬間のような気持ちにはならない。想いつづけた時間をセックスで返してもらっている。最近俺はそんなことで自分を納得させようとしていた。もう潮時だ・・・今度こそ。 「正享さん、パスタでいい?」 「ああ、ありがとう。」 晃希はニッコリ笑う。週末は俺の所にちゃんと来てくれて、以前と同じような時間を過ごす。違うのは俺達の間にセックスが存在しなくなったことだ。 背中ごしにしっかり俺を抱き締めて晃希は眠る。朝おきたらキスをくれるが、それだけだ。 そして何も聞かない、「何も言わないで。」と笑って言うから、その度俺は泣きそうになる。 そして今朝、目を覚ましたらベッドの横が空っぽで、いつもある温もりがなかった。俺はベッドから飛び出してテーブルの上のスマホを握ったところに晃希がトイレから戻ってきた。 この瞬間、すべてを理解した。 自分にとって誰が必要で、無くしてしまう恐怖がどこにあるのかを。 自分が一番になれないという意味も・・・。義人という男に一生勝てないだろう自分の無力さと悔しさ。そして今正嗣との意味不明でしかない関係の無意味さを。 ソファにへたりこんだ俺を晃希は優しく抱きしめた。 「どうして・・・そんなに優しい・・・んだ。俺は・・・馬鹿だ。」 「そうだね・・・大馬鹿者だね。そして俺も大馬鹿者なんだ。」 きつく抱きつき自分のほうがよっぽど大馬鹿者だと奥歯を噛む。 俺の居場所を無くしてしまう前に、正嗣を狂った場所から解放させよう。そう心に決めた。

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