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凪いだ・・・ 何もかもが消え去った。 あの熱がどこから生まれて、消えていったのかわからない。今後同じような事はもう起こらないだろう。何度も繰り返すものではない。 始まった場所でリセットするという行為は形だけのことだということ、それを一番理解しているのは俺自身だ。俺を現実に戻し、心を伴わないセックスから解放してくれたのは正享だ。 あの触れるだけのキスを受けた時、本当に俺のことを好きでいてくれたことがわかった。そしてその気持ちは俺が縋ったセックスによって違うものに変わったのだ。あの時の正享の顔がすべてを物語っていた。 本当に逢いたい男に気持ちが向いていたし、俺を見下ろす正享の黒い瞳は穏やかで吸い込まれそうに綺麗だったから。 友情と恋心と引き換えに、俺を狂気から解放してくれた正享。 もう逢う事はないだろう、顔を合せられるはずがない。 狂気と友情が消えていく。 スマホを手にとり電話帳を開く。 「もし・・もし。」 『よほどのことじゃないと電話しないでって言ったわよね。』 「話を・・・聞いてくれないか。軽蔑されそうだけど、やっぱり美砂緒には言っておくべきだと思う。」 『そうね。私は聞く権利があるわ。これからそっちに行く?』 「ああ・・・待ってる。」 筋が通らない事を説明しなくてはならないが、ちゃんと話すのが俺の責任だという気がする。この先どういう未来が待っているのか見えないけれど、どうしてこんなことになったのかを言わなくてはいけない。 それともうひとつ。 短いメールを打つ。 『 すまなかった  ありがとう  さようなら 』 気が変わらないうちに送信する。 そしてアドレス帳から正享の存在を消した。 ・・・ごめんな ・・・ありがとう ・・・さようなら

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