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都市伝説

 気にかけてすらいなかったけれど、Ωって本当に数が少ないらしい。萼が言っていたことは間違いではなかった。でもあまりに目にしないので、都市伝説かなにかだと思っていたことは否めない。大きな世界の中にはいるんだって、って、おとぎ話の世界のことだと思っていた。  αとαの間にたまに生まれてくるらしい。αになれなかったαなんだって。なんだか世界の帳尻を合わせているみたい。50のβの平均値と120のαの平均値を釣り合わせるために、0のΩが生まれてくるみたい。  実際そうなんだろ。  Ωは男性、女性に関わらず子を孕むことができる。婉曲に言われたけれど、実際のところそれしか能がない。身体能力知的能力共にαにもβにも劣り、男性の第二次性徴期はないかあっても僅か。だから小柄だし声変わりもすることよりしないことの方が多い。まあ簡単にいうと女に寄る。  二十歳になる少し前に初めて発情期が来た。  最初は風邪だと思っていたけど、どうも勝手が違っていておかしいと思った。大学を休んで病院にいったらそんな感じ。行く前からちょっと変だったけど。  道すがらたくさんのαに声をかけられた。初対面知り合い関係なく、視線を痛いくらい感じた。男女関係なく。こんなにちやほやされたのは初めてで正直動揺を隠せなかったな。  聞いたらΩって発情期が来るとαを引き寄せるフェロモンを出すんだって。  分かる? 俺にαが惹かれるのは俺だからじゃない。Ωだからなんだ。  ほんと酷い話。  俺は結局出来損ない。  萼も俺をそういう目で見るなら、俺はもう死んでしまうかもしれないと思った。  だって萼は、こんなになにもできない俺を見てくれたたった一人の人だから。 俺がΩだと分かった時の母の顔を思い出す。俺を責めてくれればよかったのに母は自分を責め出した。そして俺をなかったことにした。恥だと思ったらしい。  残念だったよね母さん。お生憎さま。  でも一番残念なのは俺なんだよ。分かる。ねえ。  誰か分かってよ。

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