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彼の指

 背中に手を回して声を出す。 「早く……」  頬を噛まれた。嬉しそうに、へへ、と笑う。くしゃくしゃになる顔が好き。欲しい。  下肢からはしとどに愛液が垂れていて、太ももにまで伝っている。彼の指がそれをなぞって襞の周りに触れていった。 「あ、……っ、う……!」  初めて誰かに秘部を触れられている感触に酷く戸惑う。火照った体に彼の指は冷たい。緊張でこわばる俺の体を落ち着かせるように萼が片方の手で頭を撫でてくれる。 「もしかして初めて……?」  俺は余裕のない顔で萼を見上げる。 「……そうだよ」  嬉しい、と彼は俺が聞こえるギリギリの声で囁いた。耳から感じるぞわぞわが当たり前のように快楽に変換される。全身が性感帯になったみたいだった。 「すごく優しくする。解すから、力抜いて」 「ん、っ……」  彼の指が中に入り込んでくる。異物感に顔を歪めたが、痛みはない。ぐずぐずに濡れそぼっている秘部は彼を中へ中へと誘おうと本能的に蠕動している。俺の意思でどうこうできる問題ではない。  怖い。  彼の指がみるみるうちに二本、三本と増えていく。異物感は増えるのにそれと同じくらいにじわじわと変な感覚が上り詰めていく。 「……ふ、う、……ぁ、あ……!」 「上手だよ、あーちゃん、偉い……」  あやすような甘い声で、吐息混じりに囁かれるともう全てがどうでもよくなった。彼に縋り付くように抱きつけば、優しく頭を撫でてくれる。母親だってこんなことしてくれなかった。もっと、もっとと心が欲張りになっていく。 萼は収縮を繰り返す内襞を広げるように強く押して撫で上げた。感じたことのない強い悦楽に腰から背中が反り返る。うなじまでざわざわとした感覚が届いて体が自分のものではなくなったかのように感覚を失っていった。  指が引き抜かれると、萼の自身が物欲しそうに収斂する秘部を掠める。それだけでも伝わる質量の圧倒さに体が震えてしまった。それは怯えからなのか恍惚からなのか分からない。体が硬直したのは本当だし、こくりと喉が鳴ったのも本当だ。 「入れていい? ……奥まで、全部」  俺を抱き込む萼の背中に手を回した。 「は、やく……早く、ちょうだい……!」  俺じゃない俺が理性の検問を通りすぎて声を発していた。ほぼ同時に身体が裂けるような質量が内奥を目指して貫いてくる。 「あ、う、っく、う……」  あまりの質量で流石に苦しいのに、体の全てが悦び彼の雄を歓迎しているのが分かる。俺今どんな顔してる? 萼はずっと俺の表情を見ている。恥ずかしい。恥ずかしいのに、もっと見ていて欲しいとも思う。おかしい。 「力、抜いて……」 「あ、で、っ、できなぁ、っ……ああ……!」 「あざみ」 「ひゃ、っ、ああっ……!」  首筋を甘噛みされながら、そこに真っ赤な痕をつけられる。でも彼はうなじに触れてくれない。下腹部では彼を受け入れるように中が激しく蠢いている。慈しむようにじわじわと割ってくれるものの、受け入れ慣れていない身体はみしみしと音を立てるかのように悲鳴をあげた。  

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