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ふうん

 息を弾ませながら言った。 「一緒じゃない」  息は弾んでいたけれど言葉は沈んでいた。 「なんで?」  俺は彼になんて言えばいいのか分からなかった。俺が萼といることが彼にとって当然であるとでもいうような態度に困惑を隠せない。なんでお前の中でそんなふうになってるのか詳しく尋ねてみたいところではあったが、いかんせん元気がない。 「一緒じゃない方がいいんだよ、お互いに」  凱虎はふうん、とさして興味もないような相槌を打った。興味ねえなら聞くなよ。 「まあ止めねえよ。それとギター無事でよかったな」  思いがけない言葉に驚いた。  俺は街角で立ち止まった。少ない人通りが俺たちをちらちら見ている。凱虎は俺が付いてこないことに気がついて振り返る。 「取りに行ったら萼がいたんだけど、お前なにか知ってる?」  1、2メートル先の彼がどうでもいいことのように頭を掻きながら言った。 「知ってるもなにもあそこに置けって俺に言ったのは萼さんだよ。あとは自分が見ておくから、って」 「お前そんなこと一言も連絡してないじゃないか」 「だって言うなって言われたから」 「なんでだよ」  語調が荒くなってしまう自分を止められない。 「言ったらお前が来ないから」  俺はおし黙る。多分そうかもしれない。いや多分じゃない。絶対行かなかっただろう。  分からない、俺は。萼の気持ちが少しも分からない。俺をおちょくってんのか。俺の気持ちを、遊んでるのか? 分からないのに、体だけは至極単純だ。  彼のことを考えたらまた気分が悪くなってきた。萼とあれだけ寝たのに、まだ足りないらしい。気持ち悪い。  胸に手を当てて深く呼吸をしてみたが、酸素が行き届かないように視界が真っ白になって身体中火照ってきた。たまらず膝をついたらそこからなしくずしに倒れていく。  俺まだ発情期終わってないんだった。  性欲がじわじわ侵食し始めてくる前に急激に睡魔に襲われた。多分寝たほうがいいとなけなしの理性が泣きながら訴えている。  頭上で凱虎が大丈夫かよとかなんとか言っていた。彼に寝る、とだけ言って俺は意識を手放した。もうなんか全部どうでも良くなった。  疲れた。  

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