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絶対
『ありがとう。でも私はそんなふうに言われるほどすごい人じゃないです。本当、ゴミみたいな。社会不適合者の極みだし、子どもの頃から周りに出来損ないと言われて育ってきたし、今も出来損ないだと思っています。恥の多い人生を送ってきました。全然上手くいかないことばかりで疲れるし、そんな眩しい言葉、私にはもったいないです。』
俺は大人気なくも卑屈になっていた。この返信を送るか送らないか考える間も無く指は送信を弾いていたし、既読がついた後になって心が狭いなと酷く自分を恥ずかしく思った。
返事はすぐに返ってきた。
『そんな霹靂さんだから、きっと今のような音楽を生み出せたんだと思います。私もそのようなことを考える事があります。そんな時は霹靂さんの曲を聴きます。そうするとなぜか元気が出るんです。だから私は社会不適合者で恥の多い人生を送ってきた霹靂さんの曲が大好きだし、大好きな曲を生み出してくれる霹靂さんも大好きです!』
ただの文字なのに、どこの誰かも分からない言葉なのに、胸がぶあ、と熱くなる。余計なことを言いそうになる。
『今日、ギターを無くしちゃったんだ、だからもうしばらく作曲はできそうにない。あなたの期待に応えられなくて残念ですが……。』
俺は本当大概かまってちゃんだよな。性格悪いよ。ほんと。
『そのギターって、とても大切になさっているとこの前おっしゃっていたギターですよね。壊れたのではないのなら、まだチャンスはあるのではないでしょうか? 無くしたということでしたら、心当たりの場所を探してみるとか……ちょっと出すぎたことでしょうか、すみません。でも霹靂さんの新曲が聴けなくなるのは残念です……!』
『どこにあるかは分かっているんです。恥ずかしい話、取り上げられちゃって。』
『そんな……! 大切にしているものを取り上げられるなんて、霹靂さんの気持ちを考えると居たたまりません……どうにかして取り戻せないのでしょうか。』
ちょっと迷った。けど打った。
いいやもう。
『告白しないと返してもらえないんですよ。子どもの頃から好きだった人なんだけど、今の今まで逃げてばっかりで。変な話でしょう。』
自分で書いていて、馬鹿みたいだなって思った。
『人の恋路にちゃちゃを入れるなんて、取り上げた人は相当おせっかいですね……霹靂さんかわいそう……! でも、逆にチャンスかもしれません! これを機に告白しちゃいましょう! もしかしたらいい返事が返ってくるかもしれないし……! 霹靂さんなら絶対に上手くいきます!』
絶対に上手くいきます! かあ。
俺は笑ってしまった。
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