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下弦の月

 でもどうやって連絡したらいいんだろう。2年前に逃げた時連絡先という連絡先は全部消してしまったし、俺も電話番号も連絡先も変えた。  そもそも彼に会ったらなんて声をかければいいんだろう。寝ちゃったし。気まずい。会ったところでどうすればいいんだ。どこから話せばいい? なにを? どんな風に……?  分かんねえな。  ずっと考えていたら朝になったので、とりあえず寝た。寝た後も眠れなくて、結局寝たのは昼過ぎだった。起きたら夜になっていた。  その時になって、俺はタイムリミットの三日のうちの一日を怠惰に過ごしてしまったことを知った。うーん。一日と言うのは短い。  シャワーを浴びて、とりあえず外に出た。ここにいたって仕方ない。気分が微妙に前向きなうちに外に出た。クスリのおかげで体の調子は良い。ギターが無いと物足りない。冬の風が寒い。なんとなく海の公園にきた。彼がいた場所だから。  二つあるベンチに人の姿はない。まあそうだよね。でも彼はしばらくこの街にいると言っていた。だから多分いるはず。凱虎の情報によれば卯姫子もいるはず。  俺どうしよう。まだ思いがまとまっていない。  とりあえずベンチの上に膝を抱えて座った。公園の木々の間から、夜の海がよく見える。月が高いところにいる。この前見た下弦の月が少しずつかけている。細い月の明かりでも、ないのとあるのでは見える海の景色がまるで違った。月明かりは優しい。  海の風の音がした。ギターがあれば弾くのに。ここにないから呟くように歌った。どうせ誰もいないんだから良いだろう。時間は深夜の少し前。  駅から離れているこの公園には、まず人はやってこない。眠りかけた遊具と木々だけが俺の声を聞いている。  萼はどこにいるんだろう。  風が気持ちいいな。彼の匂いが恋しい。

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