でも結局恋人たちと別れたのに由斗と路夏が友人として側にいた。それによって智輝はまだ自分は存在していいのだ。必要としてくれる人がいるのだと壊れないで済んだのだ 智輝をお人形にすることができなかったからか琉輝さんは俺のものにはなってくれなかった。 俺に飽きた琉輝さんは俺を風俗店に売った。とはいえ琉輝さんの店ではあるのだが…中の男の買付は別の人がしてて琉輝さんはこの店には来なかった。 それまで俺は荒れた性生活を送っていた。でもこの店になるとこれまでのものは可愛いものだったんだということも理解した いつしか俺は俺ではなくなった。この店のキャストには番号がふられていて皆その番号で呼ばれていた。名前を呼んでくれる人なんて… あぁ…唯一、一人俺をずっと名前で呼んでくれる人はいたのだが…その人と会うことは滅多になかったから俺はもう存在していないのと変わらない 死ぬまでこのまま…誰にも愛されることはないのだ… 心はからからに乾いて俺は人ではなくなっていたように思う これは自分なのか…何なのか…さっぱり見えなくなって…真っ暗闇で… そんなとき眩しいくらいの表情の琉輝さんが会いに来てくれた…やっと俺をここから出してくれるんだ…そう思ったのに… 謝罪？意味がわからない。あの琉輝さんが謝罪の言葉を口にするなんて…おかしい…おかしい…オカシイオカシイオカシイオカシイおかしい… 気付いたら部屋は血の海でそれを笑って見下ろす俺がいて…その足でふらふらと向かった部屋の中には憎くて憎くてたまらない路夏がいた。 あぁ…琉輝さんもこの純粋な瞳を持つこの子に洗脳されちゃったんだ…智輝もそうだったみたいに… 憎い…憎い… 智輝も琉輝さんも変えてしまったこいつが許せない… 「みっちー！久しぶりだね」 「久しぶり。亜咲斗」 路夏は戸惑いの表情を見せていた。気にくわない… 「どうして君がそこにいるの？そこは俺の場所だったのに…何で？何で智輝も琉輝さんもお前みたいなやつを選ぶの？意味がわからないんだけど」 「亜咲斗…」 「君に名前なんて呼ばれたくないんだけど？その名はもう捨てたしね」 路夏はとても哀しそうな顔をした。お前に同情なんてされたくない。一歩近づくと路夏が目を見開き怯えた表情をした。 あぁ…琉輝さんの血を浴びた俺に気がついたのかな？匂い？かな？それとも… 「…琉輝さんは？」 「ん？さっき血塗れにしてあげたとこ。バカだよね。誰も伴わないで俺の部屋に来ちゃうなんて…」 「どう言うこと…」 その顔…堪んないくらいいいね。絶望の顔…バカで単純なお前が何故選ばれたのかやっぱり理解はできないけどね その時だった。大勢の人が俺と路夏が対峙する部屋へなだれ込んできた あら？案外早かったなぁ…もっと時間掛けてぐちゃぐちゃにしたかったのに… 「310番！捕らえろ！！」 「ね？もう俺には名前なんてないの。みっちー俺と死んで？」 目の前の憎い人を刺した。路夏が崩れ落ちるのを見ることなく己の首を掻き切った これで俺は解放される… もしも…もしも…輪廻転生することができたのならば…次は…誰か…俺を…愛してくれるだろうか…