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第29話
「あさちゃん。終わったら会いに行ってもいい?」
各々帰宅した後で龍くんからそう連絡が来た。勿論了解の連絡をして待つことにする。
暫くしたら静が家にやって来た。気を使っているのか玄関先まででお菓子をくれた。
俺の大好きな店のケーキだった
「静。一緒に食べる?」
「ううん。後で龍とでも食べて。後で会いに来るでしょ?龍のことだから俺に遠慮してさっき誘わなかったんだろうし」
隠しても仕方がないので頷く。
「龍の好きなやつも選んどいたから。じゃあ。またね」
ひらひらと手を振って帰っていく。その背中が何だか寂しそうに見えた。けどどうすることもできないから…
「ごめんね…ありがと…」
小さく呟いて冷蔵庫にしまって部屋に向かう。今日出た課題終わらせなきゃ…
いつもなら静と一緒にやってたな…でも静は気にして家には暫く上がらないと思う。
毎日いたはずの場所に静がいないのはやっぱり少し寂しいな。
寂しい思いを圧し殺して黙々と課題を解き終わる頃龍くんから着信が入った
「あさちゃん!終わったよ。これから会いに行くね」
「うん。待ってるよ。鍵あいてるから勝手に入ってきて」
「わかった」
その頃あいくんはランニングにいってて自宅には俺だけだった。母は今日は急ぎの仕事があるらしく遅くなると連絡があった。父はいつも遅いし愛菜は部活がある。
「二人きりだ…」
そう呟くと何だか急に照れ臭くなる。
直ぐに龍くんがやって来た
「いらっしゃい。龍くん」
「お邪魔します。お家の人は?」
「みんな今いないよ。あいくんは直ぐに戻ってくると思うけど」
「そっか」
「さっきね静にケーキもらったの、一緒に食べよ」
「うん。いただきます」
龍くんも大の甘い物好きらしい。苦手なのは辛いもの。見た目と違って何だか可愛い…
ケーキを美味しそうに頬張る姿にも見惚れちゃう
「あさちゃん?食べないの?」
「ううん。食べる。」
「ねぇ。これさ静わざわざ俺の好きなのも買って来てくれたんじゃない?ここのケーキ屋こっちに来て直ぐに静が連れてっていってくれたとこで…」
「うん。そうだよ…何か妬ける…俺より静が龍くんのこと知ってるみたいでさ…」
「…ふふっ…嬉しいな…妬いてくれるなんて…じゃあさこれから沢山知ってくれる?あさちゃんのことも知りたいな…まぁ…でもね…誘われたとき言われたのはあさちゃんが好きなお店でお土産買いたいから付き合ってって感じだったけどね」
「そうなの?」
「うん。お店に付き合うお礼に奢ってくれたの。それがすごく美味しくて…って…そう思うと…静くんは本当にあさちゃんのこと大好きなんだよね…俺の方が嫉妬しちゃうよ…だって…生まれた頃からずっと側にいられたんだから…沢山あさちゃんのこと知ってるんだから。俺は亜咲斗さんのことは知っててもあさちゃんのことはまだまだ知らないことばかり…」
「俺は佐藤さんのことも龍くんのことも知らないことばかり…」
「こっちきたばかりだし佐藤のときは琉輝さんの言うことしかしないようにしてたし…」
「ねぇ。佐藤さん。死んだ後の俺はどうなったの?」
「…俺が勝手に埋葬しました…場所は…思い出しましたよ。暫くは…俺しか会いに行けなかったのですがその後…律さんが来てくれてそして旧友の方々が続々と会いに来てくださっていました。花は絶えることなくいつも飾られていました。俺の体が動く限り俺も毎日のように会いに行っていたのですが…あるときから体が言うことを聞かなくなり…だからそのあとは旧友の皆様。そしてその子供たちが会いに行ってくれました…俺が知ってるのはそこまで…今はどうなっているのかわかりません…」
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