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第30話
「今度…見に行ってみようかな?」
「あれからとても長い時を重ねました。今行けるかはわかりませんが…」
「…佐藤さんが守ってくれようとした場所でしょ?そこまでいけなくても…近くにはいってみたい…」
「…わかりました…今度の休みの日にでも行きましょう」
「なぁに堅苦しい感じの会話してんの?」
急に呼び掛けられた。
「あぁ。ごめん!気がつかなかった…おかえり。あいくん」
「うん。ただいま」
「…どこから聞いてた?」
「…ん~…今はどうなっているのかわかりません…くらいかな?何の話?」
「秘密」
「何それ!酷くねぇか?あさ」
「いいでしょ?デートだもん」
「はいはい。ごちそうさま」
「あいくん。ケーキあるよ。食べる?」
「うん。食う。手、洗ってくるわ」
前世の記憶があることは何だか知られちゃいけない気がして咄嗟に秘密と話したけど…
「あさちゃん」
「ん?」
「大好きだから…だから…今の俺もみて?」
「見てるよ。だから会いに行くの。過去の俺と決別するために」
「決別?そんなのしなくてもいいんじゃない?」
「だってそうしないと龍くん心配そうな顔する…佐藤さんだからって思っちゃうでしょ?それはいやなの。俺はちゃんと龍くんだから好きなのに」
「…っ…ごめんっ!そんなつもりはなかったんだけど」
「もう!龍くん自分のことわかってる?その見てくれでその性格でしょ?もっと自信もってよ。俺の想いだって信じてよ」
「ごめん」
「ねぇねぇ。龍くん」
「ん?」
もっとこっち…
「ん?」
チュッ…
頬に口付けると龍くんは真っ赤だ
「んなっ!なっ!」
「いいでしょ?恋人だもん。てかこれまで沢山お付き合いしてきただろうに…毎度そんな感じなの?」
「あさちゃんだからだよ。確かに…まぁ…遊んできた…自覚は…ある…けど…でも…こんなに好きになることなんてなかったもん。言われて付き合って…いくとこまでいって…別れてきたから…ドキドキすることもなかったし…好きって囁くけどそんなの挨拶みたいなもんで…本気で言ったことない…あの…えと…引く?」
「ううん。だって龍くんかっこいいもん。周りが放っておくわけないからそうだとは思ってたよ。そういえば独り暮らしなんだよね?ご家族は?これ聞いて言い話?」
「あぁ。うちの両親は海外で仕事してるの。で一旦帰国して一緒に住んでたんだけど結局直ぐに呼び戻されたから。俺は高校通い始めたし定くんやあいくんがいてくれて。こんなに仲良い友達なんて向こうではいなかったから離れがたくて…両親は一緒に戻ろうって言ってくれたんだけどね」
「じゃああいくんと定くんのお陰で俺は隣に置いてもらえるんだね。感謝しなきゃ…そうでないと…出会えなかった…出会えて嬉しい…こっちに残る選択してくれて嬉しい…でも…行く行くは…戻るってこと…?」
「ううん。俺はずっとこっちにいる予定。」
「…でも…海外の方が選択肢が広がるんじゃ…」
「そうかもしれない。けど俺はこっちにいたい…ガキみたいなこと言うと…両親よりもあさちゃんといたい…離れたくない…」
熱い視線にとらえられて息を飲む。やっぱり龍くんは綺麗だ…
「龍くん…」
「俺は一生離さないつもりだけど?」
「嬉しい…うん…離さないでね…」
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