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第60話

「由」 「亜咲斗…。ふふ…何か変な感じだね。あさちゃん」 「俺…」 「大丈夫だよ。わかってるから。あのときは琉輝さんしか見えてなかったこと。俺が何をいっても流してた。ただこれだけは言える。お前がいなくなってもお前を憎む奴は誰一人としていなかった。…あのときはわからなかったかもしれない。けど…今気付いてくれたのなら今度はその生を全うして欲しい。自分でいなくならないで…お願いだから…」 「うん…由」 「ん?」 「ちょっとだけ…抱き締めてくれない?」 「龍くんに怒られちゃわないかなぁ?ふふ…いいよ。おいで。亜咲斗」 定くん…いつもいつも小さい頃から俺のことを気にかけてくれてた… 困ったらヒーローみたいに直ぐに駆けつけてくれてた。あいくんと過ごすより定くんと過ごす時間の方が沢山あったね…ずっと側にいてくれてありがとう …由もずっと俺を見守ってくれてた…根本は変わってないね… 由…。幼稚舎から一緒だったから由が一番長く一緒に時を過ごしたことになるんだよ。気付いてた? 由は俺を見つけるといつも一番に声をかけてくれてたんだよ。 俺ね、怖くて素を出せたことがなかったの…唯一…由…君にだけには全部見せられてた 大人たちに悪戯される俺は普通じゃないってわかってたから真っ直ぐな由が眩しかった。誰とでも仲良くなれる由が羨ましかった。 側にいると嬉しくて…でもやっぱり怖くて… そんな感情持ってたなんて…きっと…俺は少しの間だったかもしんないけど由のこと好きだったんだろうな…すぐ諦めた想いだったんだろうけどね …由…俺がお前を思い続けていたのなら…その思いに気付けてたのなら俺の人生は違ったかな? 「亜咲斗…」 「ん…」 「キスしていい?」 「へ?何で?」 「今の顔可愛い…」 「だめだよ…俺には龍くんが…」 「さっきしてくれたのに?」 「あれは…龍くんに嫉妬して欲しくて…」 「くすっ…わかってるよ…俺ね、由斗のときの初恋って亜咲斗だったんだ。知ってた?」 「え?」 「亜咲斗は儚げな美人で名前を呼ぶと可愛く笑って。でも自然と笑うのって俺にだけだったから嬉しかったんだ」 「由…俺も初恋は由だったかもしんない…幼い頃の小さな小さなすぐに消えた恋心だったんだろうけど…。ねぇ。由」 「ん?」 「俺を抱いてくれたときって覚えてる?」

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