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「…小さい」 「へ?あぁ手のこと?俺が小さいんじゃなくて君が大きいの。鍛えてあるしっかりした手だね」 そういいながら何度もニギニギとするからなんだか言いようもないくらいな感情が込み上げる 「どうかした?」 そう至近距離で覗く少し色素の薄い瞳に心臓が跳ねた 「暉さん。何か可愛い。たーのしー」 「え?」 「あぁ。これが素ね。友達とか家族とかは知ってる。でも職場のみんなには秘密だよ?母があれでしょ?なんか似てきちゃって…堅苦しいのは元々得意じゃないんだよね」 「そうなんですね」 「んもう!固いなぁ…キスしちゃうぞぉ」 「え…あっ…」 「くすくす…本当可愛い…たっくさんお相手してきたのに初心だねぇ…」 「…」 「あぁ…ごめん…調子に乗りすぎた…」 「いえ…自分の意思でしたことはないから…どうしていいのかわからない…貴方みたいな美しい人に至近距離で見詰められると…緊張してしまって…恥ずかしいというか…嬉しいというか…思い切りねじ伏せたいというか」 「えっ?俺捩じ伏せられちゃうの?…うん。そゆの…好き」 「は?え?」 「冗談だよ。でもドキドキしちゃった。暉さん本当綺麗だね」 「いや。あなたに言われても…」 「綺麗な黒髪で綺麗な澄んだ瞳…その瞳に映る人はどんな人なんだろうね。もうみつけたかな?」 俺の髪に細く美しい指を差し込んで徐々に下へ向かう。辿り着いたのは蟀谷辺り。そこで一旦指を止めてじっと見詰めそう呟いた 「君はもっと自信を持って。まだ多くの可能性が眠っていると思うから…」 今度は頬に触れて呟く…あぁ…この人に…俺は… 「っ!な…ど…え?」 「貴方が悪いんです…そんな…瞳で見詰められたら…我慢できませんから…」 彼を壁に押し付けて唇を奪った。彼の慌てるその姿も新鮮だった 「…不用意に…近付かないで…俺…貴方に何するかわからない…貴方は美しすぎる…」 「…やば…ときめいちゃった…」 何か言ってるけど聞き取れなかった 「何ですか?」 「何でもない…えっと…ここ…ここが君の部屋だよ。好きに使ってね。リフォームとかもして良いからね」 「ありがとうございます」 天青さんは無防備すぎる…あんなに綺麗な顔であんなことされたら… あんなに気持ちが揺さぶられたことはこれまで多くはなかった…これが好きという感情なのだろうか?俺にはわからない… 一先ず気持ちを落ちつかせるため着替えることにした。元の家に戻り服をいくつか用意してもらった数着しかないがその中で無難なものを選ぶ リビングに戻るとソファーで寛いでる背中。後ろから羽交い締めにしたい衝動に駆られる…それを必死で抑えて声をかけた 「天青さん」 「おかえ…」 私服姿の俺をみた天青さんが固まる。何かおかしいのだろうか? 普通に黒のカットソーと細身のジーンズ…無難だと思ったが… 「足長っ!」 「そうですか?平均的だと思いますが」 「いやいやいや…」 そう言いながら近づいてくる 「ほら。俺と身長そんなかわんないのに腰位置高いじゃん。こんなに違う!カッコいいなぁ…困る…」 「こまる?」 「…何でもない。あ。これね、これまで作ってきた建物の資料ね。中にそれぞれの店のコンセプトも書いてあるから何か参考になればいいけど。それとこっちが君の初仕事。今度改装されるレストランの内装のデザインとインテリアのデザインを考えて欲しいんだ。一応一緒に手伝ってくれる子も何人かいるから明後日紹介するね」 資料をパラパラとめくっていく。どれも繊細で緻密な計算がされたものばかり。 確かに俺のとは全く違う。でもどれも素晴らしい 「ここ!直接見てみたいのですが…」 「うん。いいよ。じゃあ出掛けよっか」 「はい」 気になるものがあったので連れていってもらうことになった

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