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天青side
それから千景さんたちが滞在しているホテルへ向かった。
「天青」
「はい」
「暉さんから不思議な何かを感じたんだけど何か聞いてる?」
「実は…」
飛行機の中での暉さんの様子と琉輝さんからきいたことを話すと千景さんはうなずいた
「そうか…恐らくその人は醒井コーポレーションの先代の長男だな」
醒井コーポレーションと言えば華陵院と肩を並べる世界的な大企業だ。
しかし嘗て大きな事件があり経営が傾いたときもあったと聞いている。琉輝さんもそれに加担していたのだと思う。
「俺もその事件のことは父から聞いたものだから詳細はわからないが…。その当時逮捕されたのは経営者とその妻と数名の関係者。長男はその数日前に亡くなっている。次男は咎められなかった。彼の友人の調べてきた多くの証拠と長男の手記等があったからだそうだ。
長男は自分が経営していた風俗店のキャストに刺殺されたらしい。その時彼に付いてきていた人も刺されて彼は数年間昏睡状態だったようだ。傾いた会社を立て直したのは残されたその時はまだ高校生だった次男。その彼がそこから数年かけて会社を立て直した。彼はとても優秀で醒井の環境で育ったにも関わらず思いやりのある人間だったと父は言ってた。昏睡状態だった人は五年くらいたって目を覚ましたようだ。実はその人は次男と交際していたこともあったが一旦別れていてその暫く後になって数ヶ月は長男と交際していたこともあったみたいだな。結局彼の体調面が落ち着いたとき二人は一緒になり今の醒井コーポレーションの礎を築いたらしい。でその長男を刺したキャストって言うのが恐らく琉輝さんの言ってた亜咲斗さんってことなんだろう。」
「最後の被害者は愛桜海さんって子だったんだ。その人を見たとき亜咲斗さんなきがしたって言ってたよ」
「多分同じときに転生したんだな。過去のことを後悔したのを見かねてまた巡り会わせてくれたのかもしれないな。落ち着いたらまた愛桜海さんに会わせてやれば何か憑き物がとれるかもしれない。今の暉さんは精神面が不安定…なぁ。天青」
「ん?」
「これは提案なんだけどもし暉さんが両親のもとに戻ったのにも関わらず精神状態が変わらなければ神楽坂邸で引き受けてみたらどうだ?十夜は優秀な医師だし夕燈もカウンセリングの資格あるしそれにお前が暉さんのことが心配で堪らないんだろ?」
「やっぱりわかる?」
「お前は誰より分かりやすいからな。感情丸見えなんだよ」
「あの虚ろな瞳に映りたかった…綺麗な瞳で俺を見て欲しかった…そう思った時点でもう彼に惹かれてたんだろうね。一目惚れなんて…初めてだな」
「お前は結構解りやすいけど好きになるまでは時間はかかるもんね。もう元カレのことはいいの?」
「もう何年前の話だよ。何とも思ってないよ。あの頃はお互いまだ若かったしね」
正直前のパートナーのことは思い出したくない。好きなまま離れてしまったから暫くはずきずきと胸が痛んだものだったから。
情けないことに数年前までは彼を引き摺っていた。
最近になってやっと新しい出会いを…と思った矢先…暉さんに出会ってしまった
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