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天青side
「…小さい」
何を急に言い出すのかと思って暉さんの視線を追った時初めて自分が手を引いていたことに気付いた。慌てていることを隠したかったけど変な声が出た。けど暉さんは慌てたことに気づかなかったみたい。手を離そうとしたんだけど少し強く握ってくれてたからできなかった
「へ?あぁ手のこと?俺が小さいんじゃなくて君が大きいの。鍛えてあるしっかりした手だね」
握り返してくれていたことが嬉しくて何度もぎゅっと握り返してみた。今だけかもしれないから…今だけは…もう少しだけ…君の温もりを感じていてもいいですか?
ふっと視線を戻すとなんかさっきまでと少し違う気がした。少しだけ表情が変わったように見えたのだ。
「どうかした?」
具合でも悪いのか?それともやっぱり俺に手を握られていたことが嫌だったのか?心配で彼の瞳の奥をみたくて至近距離でじっと見つめてしまった。
お願い…嫌わないで…そう想いを込めて…
じっと見続けてたら突然暉さんの頬が朱に染まった。初めての表情に嬉しくなって泣きそうになるけどそれを誤魔化すようにからかうみたいに声をかける
「暉さん。何か可愛い。たーのしー」
半分本音だけど
「え?」
急な違いに不思議そうに声をあげる暉さん。
でもこれが本当の俺だからもう隠さない。どうせばれてしまうんだから
「あぁ。これが素ね。友達とか家族とかは知ってる。でも職場のみんなには秘密だよ?母があれでしょ?なんか似てきちゃって…堅苦しいのは元々得意じゃないんだよね」
「そうなんですね」
びっくりしたかな?失敗かな?
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