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「お久しぶりです。琉輝さま」
「佐藤…」
愛桜海さんの腰を抱いていた男…これが…あの…佐藤…
「…琉輝さん。なんだか無様だね。その姿。生まれ変わって亜咲斗の歩んできた道を通ってどうだった?何も心は動かない?」
そう言う難いがいいのが…おそらく…
「律…」
「琉輝さん。俺は貴方を許すつもりはない。俺の友人たちを酷い目に合わせた人だから。でもね。亜咲斗は…」
「由斗くん…」
そして…定広さんはあの由斗くんだったんだ…
「ねぇ。…琉輝さん…俺はもういいよ。暉さんとして転生して…もう…十分苦しんだでしょ?俺は今こうして佐藤さんと再会できて…愛してもらえてとても幸せだよ。貴方が前世で俺を利用しようとしなければ俺は佐藤さんに出会えなかった…今世で彼と再会し…愛することを知ることなんて出来なかった。愛されることを知ることだってそう…。俺は貴方のこと愛してた。でもそれが偽りだと知ったのは…自分が息絶える直前だった…佐藤さんの気持ちにだって気付かないふりしてた。でもね。今はこうして…こんなに愛されてる…だから…もういいんだ。琉輝さん。貴方と出会えてよかった」
「琉輝さま。貴方は私の大切な人でした。貴方がいたから…貴方があの檻の中から俺を連れ出してくれたから…外の世界を見せてくれたから…だからこそ…俺は亜咲斗さんに出会い…恋をして…最期のときも見送ることが出来た…そして…天寿を全うしたのです。あなたには感謝しかない…確かに非人道的なことしてこられました。しかし最期の貴方はちゃんと人でありました。皆がそれを喜び歓喜していました…貴方によって全てを奪われた人もいました。きっとその方が多い…けれど…忘れないで…俺みたいに救われた人もいたということを…」
「ねぇ。琉輝さん。知ってる?貴方のお葬式ね、とても多くの人が来てくれていたの。貴方の死因は事故死とされていたよ」
律が語り始める。
俺はその後の事は勿論知らない。そんなことがあったことも知る由がない
「どうしてだと思う?」
「わからない」
「…貴方と貴方が関わってきた多くの優良な企業、そして…亜咲斗を守るためだよ」
「え?」
「そうでしょ?佐藤さん」
律の話を静かに聞いていた佐藤…龍吾さんが語り出す
「…はい…貴方の死因を殺害だとしてしまったら皆理由を知りたがる。そしたら裏の仕事の事やこれまで非道な扱いをしてきた人たちのこと…その全てが明るみに出てしまう…そしたら貴方が真摯に向き合ってきた多くの企業にだって大きな支障が出てしまう。彼らを巻き込むこと…それだけは避けたい…。そう貴方はいつも言っていました…それに…犯人が亜咲斗さんということも知られてしまう…あの頃は少年法が改訂され未成年でも世の中に名前を晒されるようになっていましたから…
…亜咲斗さんの名前が出るのは俺が嫌だった…だってそうでしょ?ただ一途に貴方を思っていた…ただ愛されたかった…たったそれだけの美しい少年がそんなことしたなんて…そんなのあんまりだ…俺はあの頃から亜咲斗さんに心を奪われていました…俺だけではありません…片岡や…他の貴方の付き人たちだって多くの客だってそうだった…でも亜咲斗さんは…貴方以外は見えていなかった…だから…あんなことになった…だから…多くの伝手を使い全てを偽った」
片岡も佐藤同様いつも俺の側に付いていた奴だ。片岡は佐藤とは違い表現豊かだった。佐藤には裏家業、片岡には表家業を世話してもらってた。片岡はおそらくだが裏のことはあまり知らない。そうなるよう俺がしてたから。
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