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天青side 「ん…」 「おはよ。天青くん。大丈夫?」 「さなえさん」 「少しだけアザになってるけど…大丈夫そうかな?」 「…さなえさん。あの…俺…あのまま暉さんに殺されるなら幸せだなって…そう思っちゃいました…俺が他の人…とはいえどのみち暉さんのことなんだけど…それを呼んだだけであんなに…我を忘れるくらい歪んだ顔をするんだから幸せだなって…俺…思われてんのかな?って…」 「そっか。…」 「俺…自分が思った以上に暉さんに嵌まっちゃってるみたいです」 「それもいいんじゃない?けど…殺されてもいいなんて…言わないで…君は俺にとっても息子みたいに大切なんだから…」 「…」 「…なんてね…俺も人のこと言えないんだけどさ…。俺は…茜が好きで好きで堪らないんだ…茜がいてくれればそれでいい。茜に殺されるならそれでもいい…茜とはね昔から色々あったんだ…それこそお互いに殺そうとしたことも殺されようとしたこともあった…俺も茜もどこかおかしい時期があったからね…それでも…結局…愛してるからこそ殺せなかった…ねぇ。天青くん。暉さんはこれまでの人とはどこか違う。だからきっとこれまでしてきた恋愛なんか可愛く思えちゃうくらいたくさんの苦難が待っていると思う。すれ違いが生じてしまうことも傷つけ合うことも多くあると思う。けど…忘れないで。今のこの想いを。暉さんを想う大切な心を。暉さんはまだ不安定なんでしょ?夕燈くんにも十夜くんにも聞いてる。二人が動けないとき俺もできる限りサポートはする。そうじゃないときだって。 どうしようもなくなってしまう前に俺を…みんなを頼ってくれないかな?話をしてくれないかな?約束してくれる?」 「わかりました」 「これからリビングへ行くけど愛桜海さんたちがきてる。千景くんが連れてきているはずだ。千景くんから生まれ変わりの話は聞いてる。それに…愛桜海くんとも話した。うちのね一番下が愛偉兎くんと同じクラスなんだ。それと千景くんの息子も同級生でね。ここで繋がりができるとは思ってなかったけどね。前世の話をしに来てくれてるんだ…暉さんの前世と深い関係があった人たちなんだってね。暉さんと愛桜海くんたちって。…正直…前世の話しをしたところで暉さんがどんな精神状態になるのか俺たちにも全く検討はつかない。何かあったら君はどうする?」 「それでも俺は側にいる」 「…わかった。じゃあ行こうか。動けそう?」 「はい」 さなえさんに手を引いてもらってベッドから起きあがる。 今日父は大きなオペが入っていたから代わりに翠くんが呼んでくれたのだ。さなえさんは昔からとても暖かい人だった。 茜さん…夫のことを心から愛し愛されている。8人の子供たちもみなとても立派に育っていた。 さなえさんも茜さんも若い頃いろんな苦難に立ち向かって二人で越えてきたと聞いてたからさなえさんの一言一言はとても重たいものだった

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