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「あ。そうだ!暉」 「はい」 「えっとねぇ…」 言うと書斎にいき戻ってきた手に何か握られていた 「はい。三善寺さんから暉宛の手紙だよ」 「お父様から…」 「うん。来月辺りには時間が取れるみたいだからそのときは会いに行くといいよ」 「ありがとうございます」 「家でゆっくり読んで、今日は疲れちゃったでしょ?俺送るよ」 「ありがと」 そして夕燈さんの車の後部座席に乗ってずっと天青さんの手を握ってた 帰宅して手紙の封を切る 几帳面な文字が並んでいる “暉。気付くことができずすまなかった。暉と汀子が苦しんでいることに気付かず後悔している。暉が前を向き歩き出すことを聞いたよ。華陵院はとても信頼できる人だからとても安心したよ。もっと暉と汀子と過ごしたかった…でも君たちには帰る場所があるのだから私は君たちの成長を見守っているよ。体には気をつけて。” とても短い文章。でもその中に暖かさがしっかりと見えた 「お父様…」 俺を人並みに教育してくれた恩人。あの人がいたから俺は人並みに言葉を紡ぐことが出来るようになったのだ…汀子は普通に学校にいかせてもらって普通の生活を… それなのに…俺たちの弱さのせいで何もかもが狂ったんだ。お父様に孝行もできず… 「暉さん。大丈夫?」 真っ黒な靄が心を埋め尽くす直前柔らかい声と暖かい腕が俺を包む 「暉さん。大丈夫だよ。」 「天青さん…」 「大丈夫。君は君だから。」 「そんなに怖い顔してました?」 「少しね」 「怖い?」 「ううん。怖くないよ。ただそろそろ構って欲しいかな」 そう言うと頬に口づけた 天青さんは俺にとって薬みたいな人だ。側にいてくれると靄がぱーっと晴れて心が軽くなるんだ。 たった二日で何がわかる?そういってみんなは笑うかもしれないけれど…

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