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桐side ずっと…ずっと…天青くんが好きだった…。 だからこそ幸せになって欲しくて…そのためには…何が必要なんだろう?そうずっとずっと考えて…そして導きだした俺なりの答え…それが他から誘惑されても揺れない人…だった。 …だから…天青くんの好きな人たちに近付いてきた…自分でいうのもなんだけど俺は親譲りの容姿で昔から顔もスタイルもよかった。多分俺の周りには俺より見た目がいいのは縷紅と天青くんしかいないから。そんな俺に誘惑されてもころっといかない人は稀少で俺に揺れないなら他に揺れることはないだろうて思ったから… 「あんな色っぽい天青くん…初めて見た…」 薬に浮かされてても必死で欲望と戦う天青くんの表情にドキドキした…天青くんを俺のものにできたらどんなによかったろう…でも…俺にはできない…あんな顔なんてさせられない… わかってたから…わかってしまったから…天青くんには暉さんが必要だって… 俺に表情を見られないようずっと暉さんの胸に顔を埋めてた。甘えるようなその姿は俺は初めて見た。 これまで好きになったって人にはそんな素振り見せたことなかったんじゃないかな? 自宅に戻って天青くんの姿で起き上がった自身を沈める。 「っ…く…」 どろどろした欲望が吐き出されて己の愚かさに震えた 「天青くん…大好きだよ…」 涙が次から次へと流れ落ちて床を濡らしてた… その日はそのままソファーで眠りに落ちていた 翌日。目覚めたのはもう随分明るくなってからだった ゆっくりと起き上がってぼーっとしてると着信音が響いた。寝起きでぼーっとしてたから相手が誰ちゃんと確認もしないで通話のボタンをタップした 「もしもし」 『もしもし…桐…』 「天青くん?」 驚いた…天青くんだったから 『ごめんね。休みなのに。今平気?』 「うん」 『昨日はありがとう。桐が居てくれて助かった』 「いいよ。ごめんね。俺こそ。暉さんのこと」 『暉さん?やっぱり何かあったの?』 真実を話せば嫌われる。けどもう… 「ねぇ…天青くん」 『ん?』 「今回はいい人みたいでよかったね?」 『え?何が?』 天青くんの戸惑いの声が聞こえる…そんなとこも大好き…でも天青くんが思っているのは…俺じゃないから… 「好きになった相手。」 本当に良かった…天青くんの相手が暉さんみたいな人で… 暉さんは過去の出来事で精神的に不安定だって聞いてた。それなのに…彼は裸で迫る俺に反応こそすれ手は出してこなかった。 強い人だった…とっても苦しかったはずだ…あの媚薬は結構強いものだから… これを使うとわけわかんなくなって誰彼構わず迫ってしまう。 それは自分が使われたことがあるからよくわかってた… なのに彼は耐え続けたのだ。唇を噛み締めて拳を強く握って…その姿にあぁ…敵わないなって久しぶりに思ったんだ… 元婚約者の人もそうだった…まぁ。結局あいつは他の女と結婚したんだけどね…あの頃の天青くんの姿は見てらんなかったな… でも未だにわからないんだ。どうしてあいつが…天青くんを捨てたのか…だって本当に天青くんを愛してるのはわかってたから…けど…裏切りは裏切り。あいつのこと一気に嫌いになったな… だけどあいつがいなくなったからこそ天青くんは慎重になって…ようやく…暉さんと巡りあえて…本当に…本当によかった…

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