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『もしもし』
桐がいつもよりもずっとずっと掠れた声で電話に出た。寝起きなのだろうか?
「もしもし…桐…」
『天青くん?』
「ごめんね。休みなのに。今平気?」
『うん』
「昨日はありがとう。桐が居てくれて助かった」
『いいよ。ごめんね。俺こそ。暉さんのこと』
「暉さん?やっぱり何かあったの?」
やっぱり…好きなのかな?二人で過ごした時間を邪魔しちゃって…落ち込ませちゃったかな?
『ねぇ…天青くん』
「ん?」
『今回はいい人みたいでよかったね?』
「え?何が?」
『好きになった相手。』
「…」
…桐が何を言いたいのかわからない…だから譲ってってこと?わからなくて思わず無言になってしまう
『ふふ…そんな警戒しないでよ。暉さんには媚薬飲ませて迫ったけど俺に指一本触れなかったよ。結構強めのものだったんだけどね。あれ』
「媚薬?」
桐が何をいっているのか理解できなくて戸惑う。媚薬って…何?どういうこと?
『これまでの人たちは薬なんて使わなくったって誘惑すればすぐに俺に食いついてくれた。』
これまでの人?桐?どうしちゃったの?混乱しすぎて言葉が出なくて無言で桐の話を聞き続けた
『けどさ。暉さんは強めの媚薬を使って俺が上で裸で腰を振ってもさちっとも触ってくんないの。』
裸で腰を?え?桐が?
『もうね。完敗。だから諦める。だって…きっと暉さんは天青くんを幸せにしてくれるから…きっと…天青くんを捨てやしないから…』
「桐。何言ってるの?」
やっぱり何が言いたいのかわからない…
『天青くん…俺はずっと天青くんだけが好きだったんだよ。だから天青くんと一緒にいる人は俺が迫っても揺れちゃダメ。やっちゃだめなの。』
え?どういう意味?
「桐?」
『これまでごめん。天青くんが好きな人たちが俺を選んだのは…俺がそう仕向けたからだよ。実際皆と付き合ったけど…俺は適当な時間が経てば別れを切り出してた。だって好きでもない人と一緒にいるなんて耐えられなかったから』
「え?」
胸がざわざわした…まさか…これまでのが…偶然じゃなかったってこと?え?
『まだわからない?これまでのことは全て天青くんの気持ちがわかった上でやってたんだ。だって天青くんが好きな人だよ?天青くんに一途でなきゃ任せられない。天青くんには幸せになってもらいたい。すぐに他からの誘惑に惑わされる奴なんてだめだから。だって俺の好きな人なんだもん。誰よりも大好きな天青くんなんだもん…天青くん…あのね…俺が好きになった人って…天青くんだけなんだ…。ずっと…ずっと…ずーっと…天青くんが大好きなんだ…」
そんな…そんなこと…俺…全く気付かなかった…
けど…俺の中で桐は大切な弟みたいな存在でしかなく…それ以上にはならない…だから…
「…桐…ごめん…」
ごめん…桐の気持ちに気付いてあげられなくて…ごめん…桐の気持ちには答えてあげられなくて…俺が…愛してるのは…暉さんだから…ごめんね…
色んな伝えたいことがあるのにこの一言しか出てこなかった
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