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第159話

数時間前 「おつかれでーす」 「静音。お疲れさま」 「お先です。あ。そうだ。今日あの子とご飯行きますよ」 「そうなんだな。」 「ねぇ。そろそろ名乗り出たらどうです?」 「それをしたところで何も変わらないしねぇ」 「わかんないすよ。」 「あの頃と今は全然違うから。それに言ったでしょ?あの子の好みは君みたいな人って。俺は全然違うしね」 「そんなんいうなら俺だって違いますよ?今付き合ってる人。俺は俺よりも小柄で色白で筋肉つかないようなかわいい系の人がタイプです。けど今の人俺よりもデカイし筋肉凄いし健康的な肌だし。まぁ、だからこそ自分の気持ちに長いこと気づかなかったんですけどね」 この子を思い続けている人が実はうちの店のスタッフの中にいるのだ。元は地元が同じでその人の初恋の人がこの子で けれどその頃その人は人見知りで社交性もなくいつも一人で過ごしていたらしい。 その姿を周りは遠巻きに見てて別にいじめとかではないけど話しかけてくれるものはいなかった。だからといって別に気にもならなくて過ごしていたらしいんだけどそんな中いつもみんなの中心にいたこの子が話しかけてきたらしい。ろくに返事もできないような自分をいつも気にかけてくれていたそうだ そんな彼がこの人にだけ秘密を打ち明けた。 「ねぇ。何でモテるのに彼女作らないの?」 「あぁ…俺さ…ゲイなんだよね。わかる?男しか愛せないの。誰にも言えないけどね」 「男が好き?」 「そうだよ。引く?」 「…わからない。そういう世界があることは知ってた。こんなにも近くにいるなんてわからなかったから戸惑ってる」  「そうだよね。だからさ、俺は卒業したらここではないところへ行こうと思ってる。ここにいたらいつまでたってもオレはオレでいられないから」 「そうなんだね」 「ふふっ。君と俺だけの秘密だからね?…」 そういうと彼は唇を重ねてきたらしい 「っ!!」 「くすっ…すごい顔…俺のはじめてのキスだよ。君にあげる。…なんて…気持ち悪かった?ごめんね?」   そういった彼が消えてしまいそうに感じてこの人は彼を抱きしめ自分から下手くそなキスを返したらしい 「気持ち悪くないよ?」   「っ…ありがと…」 その後何度も唇を重ねそれは次第に深くなっていき辿々しい舌使いで互いを味わったらしい 「んん…君…変わってるね」 「何が?」 「男とこんなキスなんて…できるもんじゃないよ?」 「したかったから…だって…俺…今気づいたけれど…」 告白しようとしたら彼が細い指で唇を塞いだ 「いっちゃだめ。一瞬の感情でその言葉を発してはだめだよ。君はこれからもっと沢山の人と出会う。そこで運命の人と巡り会えたら今日のことが汚点になるかもしれない」 「ならない」 「言い切ってくれるじゃん…ありがとね」 その後卒業し彼と会うことはなくなったけど心のどこかにいつも彼が居座っていた。 歳を重ねるに連れどんどん外の世界を見ていく中で彼の雰囲気は変わっていって気付けば多方面から声がかかるイケメンになっていた。 恋人もいたことはあるけど気付けばこの子と似たような子ばかりと付き合っていたらしい。そんな日々の中たまたまこの子がうちの店にバイトとして入ってきた。この人はすぐに彼だと気付いたけれど相手は気付かず…そしてあんなに眩しかった背中が仄暗く見えて…あまりのちがいに戸惑ったらしい。けどやっぱり根本は変わってない…そう思ったら昔の感情がこみ上げて…けど…彼は俺ばかりを見ていた。彼を見ていたから彼の視線の先には俺がいることを知った。 俺とこの人は真逆のタイプだ。背格好は確かに似てる。けどあの人のワイルドさは俺にはない。 接客だって全くタイプが違う。彼のファンもとても多くてその中には大手事務所の人もいる。 「あの人のことどう思う?」 そう訪ねたことがある。その時彼はこういった 「…あんなに自信満々な人俺苦手なんですよね…俺を中心に世界が回ってる感が嫌なんです」 そんなことはないのだけど彼にはそう見えたらしい そう言っているのをたまたま聞いてしまったあの人は自分の気持ちに蓋をしてしまった。嫌われているのにこの思いは邪魔なものであると…そう感じてしまったから。     

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