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第162話
「俺の何がだめだったの?」
朦朧とする意識の中答えも帰ってくるはずない…
「だめなとこなんてないよ」
「でも…昨日の人綺麗だった…すっごく…」
「そうだね。けど仕事の一環だったよ」
あぁ…なんて都合のいい夢なんだろう。そうあってほしいと思う俺の妄想だ…
「潜入捜査でね」
「ふふふっ…おかしい!いいのに!言い訳なんて!だーいじょぶだいじょぶ!きにしてないよぉ。ふふっふふふ」
「静音くん…」
なんだか自分が滑稽で笑えてくる。
「げほっ…ごほっ…うう…寝る」
意識を手放す瞬間何か温かいものに包まれた気がした。その暖かさが善くんだったらいいのに…
次に目が覚めると体は軽くなっていたが汗びっしょりだ。
「うーっ…着替えるぅ…」
そう言ってベッドから起き上がり降りようとすると床に黒い影。まだ寝ぼけてるんだな…久しぶりだもんなぁ…こんなに高熱になったの…
「よいしょ…っとと…あっぶねぇ…」
その黒い影に躓き転びそうになるのをそれが受け止めた
「へ?」
「…おはよ。」
「は?え?なんで?」
「着替える?持ってくるから君は寝てて」
ベッドに抱き戻される
勝手に人のクローゼットから着替えを出しているが俺は何がなんだかさっぱりだ
「はい。これでいい?」
「あ…うん…」
「も少し待てる?体拭く物用意してくるね」
言われるままコクリとうなずいておとなしく待った。直ぐにお湯の張られた洗面器とタオルを持ってきてくれた。
「俺がやってもいい?それとも…俺に触れられるのはもう…いやかな?昨日の可愛い彼を呼んだ方がいい?」
「…それより…こんなとこにいていいの?善くん」
そう。何故かそこには善くんがいたのだ。夢ではなかったのか?けど…こんなとこにいちゃだめだよね?
「昨日の人は?これ浮気にならない?大丈夫?」
「浮気?」
「いやだって…昨日の人新しい人でしょ?」
「あぁ…あの人は…そんなんじゃないよ。言ったでしょ?捜査の一環って」
「へ?」
「着替えよう?また体が冷えてしまう。俺出ていようか?」
「…ううん…お願いしてもいい?これで最後にするからさ」
「…わかった…」
取り敢えず新しい人ではないらしいけれどどこか思い詰めた表情にどっちにせよ俺ではない人を選んだのだろうということは安易に読み取れた
善くんに甘えるのが最後だと思うと何だかとても寂しい…けど…気持ちはその人のものだから…
この大きな手が好きだった…優しく笑いかけてくれるのが好きだった…いつもはとてもかっこいいのに抱かれるときは可愛く啼くそのギャップも好きだった…言葉で言い表せないほどに…善くんの全部が大好きだった…
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