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第163話

「ありがと…」 「うん…ご飯準備しておいたから食べられそうなら食べてね?」 「…うん…」 もう一緒に食べることもないのだ…これが…二人で過ごせる最後の瞬間だ… 「静音くんは悪くない。泣かないで」 「…俺…」 「大丈夫だよ。わかってるから…付き合ってくれてありがとうね…」 「…善くん…俺…俺ね…」 「彼と…幸せにね」 「え?」 「昨日の人…君の理想の人だったね。とてもお似合いだったよ。やっぱり静音くんには可愛い人がお似合いだね。俺みたいな男でなく…」 「はい?ねぇ?一体誰のこと?他に出来たのは善くんでしょ?昨日の人。俺と全く違う美人さんだった。すらーっとスタイルも良くてさとてもお似合いでさ。俺の前で見せつけるように腰抱いてキスまでして…闇の中に消えてったでしょ?」   「捜査の一環だよ。あの辺りに今追ってる奴がいて…そこに潜入するには男のパートナーが必要だった。お陰であの後解決したんだよ。静音くんの目の前で腰を抱いたのもキスしたのもその前から関係者が俺たちを監視していることに気付いていたから君と俺が本当のパートナーだと気付かれるわけには行かなかった。わかってしまったら君が連れ去られて酷い目にあわされてた」 「そうか…うん…そうか…わかった…で俺の新しい人って何事?」 「昨日抱き合っていたでしょ?ホテルの前で」 確かにあの店の道を挟んだ向かいにはホテルはあった。けど…え?なにそれ? 「あははっ!あれはバイトの子で酔って足がおぼつかなくて俺にぶつかってきただけだよ!彼のパートナーは少し後に店を出てきたから。お手洗いに行ってたの。フラフラのあの子を突き放すわけにも行かないしそのまま待ってたの」

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